「表裏源内蛙合戦」

見る前に「上演時間4時間越え」という情報を小耳に挟み、かつこれは長えぞ大変だぞという心構えが最初にできていたのが功を奏したな!という感じはありますね。心づもりって大事。しかしそれでも長いことには変わりなく、そして私は長い芝居が毛虫よりは好きだけどでも短い芝居の方がもーっと好きです!
というか、根本的な問題として、自分は井上御大の脚本と合わないんじゃないか!?というのがあるなあとあらためて。そりゃ熱心なこまつ座観客ではないですけど、それでも7〜8本は御大の手による作品を拝見しておりますが、それがどうもすぱーん!とくるものがない。まあ基本的に歌入り芝居が好きじゃないというのは大きいと思うんですけどね。
あーこういうシーンがあるから長くなっちゃうんだな、そういう見方をしながらだったので苦痛!ではなかったけれど、とはいえ1幕での長崎、二幕での両国、この情景シーンは長い。完全にあそこで集中力がいったん切れてしまう。そしてその集中力を回復させるシーンが飛び飛びにしかなく、しかもそういうシーンほど短い(笑)平賀源内というひとの人生を描くという点ではすごく面白いし、実際にはどうだったのかってことも気になってきたし、それを表と裏というふうに光をあててみるのはすごくよかったんですよねー。それだけに、もっとそこ集中して見たかった!という思いもあり。
ま、とはいえ私の今回のお目当ては裏源内、勝村政信さまであるのでね!これ、主役のふたりは結構な出ずっぱりだし、二人どちらかのヲタでそこそこの席を持ってみれたらそれだけでまあ元取ったぐらいの感じはあるんじゃないかと思う。私で言えば勝村さんは情景シーンでも大抵お姿を拝見できるので、袖の壁にもたれて腕組みして群衆をじっと見ている、みたいなお姿だけでもマジ身悶えするほど男前だぜええええ!とひとりでそのかっこよさに震えていたり(バカなファンだな)。二幕冒頭の口上もまったくもって淀みなく、大変さをまったく感じさせない(ここ大事!)余裕っぷりで惚れました。二幕の終盤、ぼろぼろになっていく源内(表)と対照的に、いっそういきいきと「次なる手」を囁いてみせるシーンが今作の私の「ああ来てよかった」ポイントでございました。腑分けのシーンといい、二幕終盤に立て続けに上川さんと勝村さんの濃いやりとりがあって、ああこれなら4時間でも全然オッケーなのに!とか思ったとか思わなかったとか。
しかしこれはいのうえ(ひでのり)さんにも言えることだけれど蜷川さんも基本的にじっとりしたエロが似合わないんだよなあ。どこかお花畑感覚。土着なエロティシズムってやっぱり松尾さんを想起しちゃうんですけど、松尾さんだったらどんな風に演出したのかなあ、なーんて。