「あれから」KERA・MAP#005

開幕してからの評判の高さに慌ててチケットおさえました。当日券でも余裕っぽかったですけど。
以下ネタバレしてますー。


割と前半にある、ニチカが夢を見てうなされるシーン。あそこで、子供の誕生日祝いのケーキを頼んだケーキ屋から執拗とも思える電話がかかってくるところ、見ながらあれ?あの小説だよねコレ?と思い、展開からいってもその小説がモチーフになっているのは間違いないのですが、作家名もタイトルも思い出せず。いやね!歳取るっていやね!観劇後もしばらく悶々としていたのですが翌日まったく唐突に思い出しました。

Carver's dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選 (中公文庫)

Carver's dozen―レイモンド・カーヴァー傑作選 (中公文庫)

レイモンド・カーヴァー「ささやかだけれど、役に立つこと」。原題は"A small,Good things"。
この芝居の中では夫婦がそのケーキ屋(小説では「パン屋」)に対して罪悪感を抱いていて、何十年後かに謝りに行く、という展開になるわけだけれど、そのあたりは小説とは違うし、パン屋も人間不信に陥ってパン屋をやめちゃったりはしていない。でも、小説の中の台詞にもあるように、食べなくちゃいけませんよ、だって私らは生きているんだから、という、その言葉は、この芝居の中でパゴが叫ぶ「でも俺は生きている!」と重なるところがあるように思う。思うし、そういった「生きていくために必要なささやかなひかり」みたいなものを、KERAさんが正面切って書ききった、というのが今作で私が一番胸に沁みた部分でもあった。

何というか本当に、ちょっと気恥ずかしくなってしまうほどのハッピーエンドで、実際ちょっと気恥ずかしくなってしまったのだけど(笑)、「シャープさんフラットさん」からの振り幅を思うといっそ見事だなあとも思いました。

しっかし、赤堀さんの役はいい役だな!あの人独特の凶暴な感じが照れと深い愛情からきている(まさしくこれこそがツンデレ!)のを匂わせるところもうまいし、あのお兄ちゃんとのシーンはなー!ずりーよ、ずるすぎるよ(笑)高橋克実さんも渡辺いっけいさんもさすがの巧者で、特に今回はいっけいさんの見事さに脱帽。「うちにあるものは皆、ウィンウィン言いながらまわる機械のおかげで買えているんだ」というとことかなんか、もう、さすがだなーみたいな。

小説の方もすばらしいので、舞台気に入った方はそちらも是非。