- 世田谷パブリックシアター M列19番
- 作 小松純也 演出 鈴木勝秀
そとばこまち伝説の公演をキューブがプロデュース。生瀬さんが出ますよ、と聞いた時点で行くしかない!みたいな。
個人的にはね、この脚本はすごく好きです。好きだし、いいと思ったし、なにより、私が小劇場に夢中になった頃の、あの「何でもあり」な猥雑な感じが脚本に満ち溢れているようだった。なんかオレンジルームとかOMSあたりでやってるのが目に見えそうなというか。既成の価値観に殴り込みをかける、じゃないけど「本当だったものはなんなんだ」「本当のものはなんなんだ」、死んだものだけが本当になるという劇中の台詞じゃないけれど、そういう、とりあえず風呂敷だけは大きいぜええ!的なパワーがあるよなあと思いました。生瀬さん演じる天野屋の、たったひとつのうそでこれから100年の忠義を縛り付けた、というような台詞はとてもよかったです。
その脚本のパワーに比べると、演出はさらっとしすぎているのかなあとは思いました。転換を役者たちがやるというのも、私が見たときはさほどでもなかったけど、間延びする一因かもなと思ったり。もっとぎゅうぎゅうに詰めてやってちょうどぐらいじゃないかしらん。
キャストの中では、とにかく橋本じゅんと生瀬勝久の一人勝ち。あ、二人勝ち。圧倒的でしたね。あっはっは。こうまでか!というほど圧倒的でした。もちろんまことさんもいいし、伊達さんの一学*1もよかったんですが(長槍見事だし)、いかんせんあまり出番がないからなあ。まあしかし、私としてはこの芝居はじゅんさんの大石が見られたという点において見た甲斐あった作品でした。かっこよすぎて震えがきたぜ。
このふたりと藤木さんを較べるのは酷だと重々承知ですが、ですが・・・やっぱもうちょっと、どうにかなんないか。なんつーか、ぺらい。芝居が薄いよ。ぜんぜん埋まらないもの、空間が。所作がひどいのはまあ目をつぶるとして(ずっこけかけたけどな、あの見得)もうちょっとがんばってほしいところだよ。仁さんの役は難しいとは思うが(これは藤木さんも同じですが)、役が背負ったドラマほどには人物が見えてこず。惜しいなあという感じ。
あ、あとあの堀部とその妻の「あさきゆめみし」のシーンはよかったな〜。ベタになりそうなギリギリのところで抑えの効いたいい台詞の連打だった。奥さん役誰かな〜と思ったら加藤貴子さんだったんですね。
ラストシーンはきれい。そのラストシーンと、たたずむじゅんさんの後姿の切なさは本当に心に残りました。