「リチャード三世」

建てかわった赤坂アクトシアター初見。とかいいながら前のがどんなだったか今いち記憶に薄い。何かベコベコしてたって印象あるんですけど(どんなだよ)、それよりはよかったかな。でも動線がかなり悪い。ロビーが混み合いすぎて休憩時間身動き取れなくなるおそれがあるのでお気をつけて。1階席の後方でしたが、見やすかったのはよかった。

古田新太のリチャード三世、そしていのうえ演出。なるほどなーという感じです。私は基本的に舞台上にスクリーンやモニターを置く演出が好きではないのですが、今回のは最初はかなりうざかったものの席の見易さもあってか後半ほとんど気にならず。メディア戦略の演出として使っていたのはうまいなと思った。セットの感じも好き。

岡崎さんのオリジナル曲でテーマソングを作るのが最近あたりまえだったので、ありもんの曲*1をフューチャーしていたのが懐かしくも新鮮であった。いいねー。かっくいい。あのエレベーターに乗って古田さんが上がっていくところに大音量でかかるとことかゾクゾクした。それと、本編とは関係ないけど幕間の音楽が「シャイン・ア・ライト」のサントラそのままだった!!私は休憩時間と同時にトイレダッシュしたので1曲目は聞けてないんですけど、「シャッタード」からはそのままだったのでJumpin’ Jack Flashもそのままやったんじゃないかと思う。いのうえさんシャイン・ア・ライト見に行ったんかなあ〜。

古田さんのリチャード、もう明日が千秋楽、というここにいたって、もちろんというか、まだ噛んでます(笑)むしろ噛みまくりまくりすてぃだった。リチャードとしては、やはり冒頭が厳しい。冒頭と、その後のアンへの口説きね。ボイスレコーダーでモノローグとダイアローグを分ける、というやりかたはありだと思うが、正直なところ何言ってるかわかんなくなるとこ多かったぞ。あの画面に映し出している台詞、ご丁寧に古田さんの台詞のタイミングと合わせてるんで、古田さんが言い淀むと画面も止まるとか、気が散るよ〜〜!みたいな。

もともと古田さんって、モノローグよりダイアローグ、せりふの丁々発止が圧倒的にうまい、リズムや間に絶妙なものがあるひとだという気がするんですよね。その、アンとのシーンが終わったあとからはそういうやり取りが増えていくのでそこからエンジンかかってきたかなあと思いました。

しかしですね、そういう感じでちょっと斜めった気持ちで見ていたんですけど、なんつーか、最後はやっぱずるいっつーか、まるで口説き落とされてしまうアンのごとく納得させられちゃったというか、二幕で形勢逆転されかかるあたりからの古田はよかった。あの天幕のシーンとか、おそれているものがもはや何なのかもわからなくなったリチャードの困惑が見えてよかったです。あと、今まで本家そのまま含めアレンジ的な「リチャード三世」結構見てるんですけど、最後の戦闘シーンは自家薬籠中のものというか、圧倒的にこのいのうえ演出がすばらしい。戦闘シーンを舞台上で花開かせることにおいて今、いのうえさんの右に出るものはいないであろう。そしてことここにいたっての古田の説得力よ!あの殺陣の重さ!重量感!執着!執念!そして「馬をくれ馬を!かわりにわが王国をくれてやる!」というあの台詞の異常なまでの説得力。いやー、ほんと、最後は帳尻合わせてきたなーと。さすがです。

そしてこのリチャード三世でなんといってもすばらしいのはともすれば蔑ろにされがちなヨーク公夫人、エリザベス、マーガレットの女性三人。本当にお三方ともすばらしいが、しかしあえて銀粉蝶さんを特化させていただきたい!すばらしい。すばらしすぎた。もうこれ以上のマーガレットを見ることはないだろうし、見れなくていい!ぐらいの満足感。なんなんだあの人。長台詞をものにする、というのはああいうことをいうのです。いのうえさんって、やっぱりもともとアンダーグラウンドな嗜好があると思いますけど、その演出にがっつりはまってるってこともあるんだと思いますが、いやそれにしても。畳み掛ける口跡の鮮やかさ、台詞のキレ、緩急、エリザベスに「呪い方を教えて」と言われ地の底から響くような声で「失ったわが子を本当よりももっといい子だったと思いなさい」と畳み掛けていくところとか息をするのも忘れるほどの引力だった。このシーンの去り際に感極まって泣いておられたようだったのだけど、演出なのかなあ。いやとにかくすごかった。いい物を見させていただきましたです。

舞台写真を見たときはどうかなあと思ったポップでキッチュな衣装も、実際見てみるとかなりいい感じ。それにしても、戴冠式のときの古田さん、出てきた瞬間に私の周りで「ゴン太くん」「ゴン太くんだ」と囁かれていてわたしもまさにどんぴしゃでそう思っていたので笑いをこらえるのに必死でした。でも衣装のズボンがずり落ちていたからね、結構やせたんだと思います、衣装を作った時点よりは(笑)安田さんのアンは第一声聞いたときにむむむ?と思ったら枯れてたんですね。つか、枯れてでなくなる一歩前。とりあえず明日までだ!がんばれ!男性陣も好きな役者ばかりだったのですけど、久保さんも若松さんももったいない使われ方ではあるよなあ〜。亨さんのあれは、つか先生のものまねですか?(笑)

*1:The WhoのLove Reign O'er Me。ついついCSIを思い出してしまうね!