「夜の来訪者」

  • 紀伊国屋ホール R列12番
  • 作 J.B.プリーストリー 翻案 内村直也 演出 段田安則

マチネでMONO、ソワレでこの夜の来訪者を見たんですが、期せずして似た構図の芝居を連続して見てしまったなと(笑)
初日。ロビーの花の多さが異常。花の匂いで酔いそうになりました。扇田さんのお姿拝見。あとなんかいろいろゲーノージンっぽい方々も。やっぱ華やかですねえ。上演時間は約2時間10分。
名優必ずしも名監督ならず、と言うかどうかはともかく、段田さんのことはもちろん掛け値なしに大好きだし役者として全幅の信頼を置いておりますけども、しかし演出!となるとどうなのか!という不安もなきにしもあらずだったんですが、いや、たいへん面白かったです。もちろん原作ならびに翻案のよさというのも多大にありますが、しかしそのホンのよさを殺していないし、ちゃんと実現したいビジョンが見えてらっしゃるんだなーということがよくわかる、正攻法な舞台でした。

MONOの芝居もそうでしたが、家族の違った貌がみえてくる、そのベールが徐々にめくれていくさまが見事で、最初の思わせぶりたっぷりな警官の口調が、だんだん凄みをまして聞こえてくるところとか、脚本としてすごーく面白い。段田さんが青年時代に見た芝居が忘れられなかったというのもわかる気がします。

最後、絶対このままじゃ終わらないだろう、なんかあるだろうと思ってみていたのですが・・・そこはお楽しみに(笑)

しかし、演出に回ったのでてっきり段田さんは軽い役があたっているのかと思いきやとんでもない!つか、これ、段田さん演出したかったっていうより、この警官役がやりたかっただけちゃうんか(笑)と、邪推したくなるぐらい、舞台をほぼ、支配しているといっても過言ではありません。しかしまあ、当たり前のようにうまいなあと唸っちゃいました。あの声な!ほんと役者は声が命だよ。どうあっても注目せざるを得ないよ、あのうまさ。

それぞれ個性と技術を兼ね備えたキャストが揃っているので、それぞれの段田さんとの丁々発止を見ることが出来る、というのはこの芝居の醍醐味ですね。克実さん演じる秋吉家当主の尊大さ、そしてその一家のスノッブさ。えりさん、今回「女主人」というにふさわしい磐石の構えで堂々たる風格。パンフによればこのあたりは段田さんの徹底指導らしい(笑)八嶋さんと岡本健一くんの役は逆でもよかったかも。八嶋さんはええしのボンをやるにはへなちょこさが足りず、岡本くんには冷酷ともいうべきスノッブさが足りないような。やっぱ逆で見たかったな〜(笑)坂井真紀さんの役は、へたすると「きゃんきゃんうるさい」だけになりそうなところを寸止めできちんと共感を持てる人物に仕上げているなあと思いました。

張り詰めたテンションの、サスペンスフルな台本でありながら、その「テンションのたかさゆえ」に笑いが起こるところもあって、メリハリの効いた2時間を堪能させていただくことができました。