二月花形歌舞伎

  • 松竹座 3列14番
  • 吹雪峠

あのー、あれ思い出しました。以前歌舞伎座で見た、扇雀さんと橋之助さんが出てて、それを追いかけてるのが三津五郎さんっていうやつ。*1なかなかにシニカルな台詞とかもあって(おえんの、前の夫の存在こそが私たちを深く結びつけてる、みたいなのとか)きらいじゃないんですけど、うーん、獅童さんちょっとあざとすぎかなあこれは。特に、中盤土下座して謝っていた助蔵が額を床で打った(七が強く押しすぎてぶつけた)あたりで舞台上の三人完全に崩れてしまって、終始半笑い。七と愛之助さんは立て直そうとするけど獅童さんますます調子にのる、みたいな感じで、結局直吉が刀を抜くまで空気が戻らなかった。いや抜いても戻ってなかったか。一言で言うとグダグダ。笑えはするけれど、メリハリは欲しい。七之助くんのおえんはなかなかよかったですけど。

  • 実盛物語

いやー堪能!よかった、すげーよかった。きりりとした勘太郎くんの実盛を舐めるように(文字通り)見てきました。瞳の動きまで見逃すまい!みたいな集中で見ていたけど、なんでしょうねー、隙がないつーか、張り詰めた空気をつねに身にまとっているというか。自分的には苦手な部類の演目かもと思っていましたが全然そんなことなかったです。終盤の瀬尾のくだりはあまりの展開に驚きましたけど。トラウマになるで・・・。

亀蔵さんが九郎助をやってくださってるのも大きい。引き締まった良い舞台だったと思います。勘太郎くんはもちろん実際の実盛の年齢よりもだいぶ若いわけだけど、やっぱりこういう役をやるとほんっとにお父さんに口跡がそっくりよ!!しかしその台詞もさりながら、物語るときの所作のいちいちがびしっときまっていて美しい!!ほんとに見惚れるわ。

でもって、最後の「鬢を染めて・・・」あたりの台詞でようやっと思い当たったのですけど(遅い)、これ清水邦夫さんの「我が魂は輝く水なり」の実盛なんですね!おーそうかーそうなのかーとあの芝居のラストなども思いつつ一人で興奮。

  • 蜘蛛絲梓弦

浅草バージョンしか見たことなかったんですが、そのときも充分面白かったし打ち出しにふさわしい一幕だなあという感じだったんですけど、さらにパワーアップというかてんこ盛りというか。亀治郎さんはほんとに芸達者。早替えとそのために凝らされたアイデアの数々、薬売りのとき花道から客席にむかって投げられた蜘蛛の糸に一瞬目をやった隙にもう姿が消えてるとか、きー!やられた!みたいな。それにしても浅草の時も思いましたけどそこから「番頭新造への早変わりは凄すぎ。
蜘蛛の精へと姿を現してから、頼光率いる5人との対決になるんですけど、この勘太郎くんの頼光があたしゃー大好きで!浅草バージョンの時にもっとこの二人の対決を見たいよ!と念願しておったので、座席の関係もあってほぼ亀治郎さんと勘太郎くんにロックオン。あーたまらん。
最後はあまりの盛り上がりに拍手やまず、カーテンコール。これまた勘太郎くんが目の前でしたよ・・・ちょう眼福!!

*1:自分のblogで調べた。「お国と五平」でした。