「returns」東京サンシャインボーイズ(あらすじ編)

  • シアタートップス F列4番
  • 作・演出 三谷幸喜

行ってきました。舞台のあらすじと、感想と、両方を書きましたが、長くなりすぎたため二つに分けます。どちらも完全にネタバレしています。とくにあらすじは、歌舞伎の筋書きさながら最後の最後の展開まで書いています。これは、今回の公演の特殊性を考えて、種々の事情から観劇が叶わなかった方へ、すこしでも「舞台上でおこったこと」を伝えられればと思って書いたものです。なので、これから舞台を観る予定だという方は、絶対に読まないでください。くれぐれもよろしくお願いいたします。
追記:6月にWOWOWで放送が予定されています。そのあたりも含めましてご覧になる場合はお気をつけください。
「最後の文化祭」共通パンフと当日チラシに記載のあるキャストをそのまま書いておきます。
ちなみにカーテンコール後のアナウンスは「これより、15年間の休憩です」でした。

作・演出:三谷幸喜
出演:相島一之 阿南健治 伊藤俊人 小原雅人 梶原善 甲本雅裕
   小林隆 近藤芳正 斉藤清子 谷川清美(演劇集団円)西田薫
   西村雅彦 野仲イサオ 宮地雅子 吉田羊
   戸田恵子(声の出演) 山寺宏一(声の出演)
今後の予定:「リア玉」2024年シアターニュートップスにて上演


冒頭、客電はついたまま。白衣を着た女性が出てきて、無言のままスクリーンを出し、パイプ椅子を並べ始める。数は12。12の椅子を並べ終わったところで客電が落ちる。

女性に呼ばれて入ってきたのは12人の男女。いよいよ、サンシャインボーイズのメンバー登場となる。なんというか、客席にも独特の緊張感があって、水を打ったように静か。スーツ姿の西村さん、オーバーオールの野仲さん。派手なシャツにジャケット、異常に大きいネックレスが目立つ近藤さん。ちゃらけた感じの相島さん、etc,etc。女性陣の中にひとり、一瞬名前が出てこない人いたんですが、円の谷川清美さんでした。彼女は獣医で、預かったハムスターをつれてきている。登場人物はそれぞれ、白衣の女性に促されて自己紹介をするのですが、そこで各キャラクターの名前が口に出されるものの、それ以後ほとんど呼ばれない(例外を除いて)こともあって、そのキャラクター名すべてを覚えていることは出来ませんでした。ただ一つ近藤さんの役名はタンゲさんで、そしてこれは「罠」で彼が演じた役名なので、もしかしたら他のキャストにもそういう縁があったのかもしれません。

自己紹介ではそれぞれ、離婚していたり、脱サラだったり、上司とけんかしていたり、勤めていたスーパーが火事になったりとみな、それぞれにさんざんな感じの人生。

12人の男女は皆、小学校時代の恩師に呼ばれてここにやってきた。しかし、肝心の先生はいない。白衣の女性は言う、「先生は亡くなられました」。そして、とんでもないことを言い出す。先生は地球の危機を予見していた、あと3日でケンタウルス座のなんちゃらかんちゃらから出発した宇宙船団が攻めてくる、その地球を救うのはみなさんしかいない!みなさんには隠されたパワーがあるのです!

で?っていう(笑)

そんな与太話に乗っかるやつがいるはずもなく、先生がいないんじゃ話が違う、だいたいそんなばかげた話誰が信じる、とその場を去ろうとする。しかしここで乗っかるのが甲本さん(笑)いやー俺は信じるな!シバタムラ先生は嘘をつくような人じゃなかった!何を言ってるんだ論理的に考えろ、だいたい隠されたパワーってなんだ、ここにいるのは学生時代から平々凡々だった人間ばかりだ、隠されたパワーなんてどこにある?

ここでその女性がシバタムラ先生の娘の「ミドリ」であることが明かされ、件のシバタムラ先生の映像のご登場。もちろん、演じているのは善さんです(笑)なんなんでしょうね、この善さんに対する「待ってました」感(笑)そして、その生徒ひとりひとりの隠されたパワーについて語ろうとする。タカノ!お前にはすごい能力がある、お前にはブツッ

ちょ!テープ切れてるし!呼ばれたタカノ(阿南さん)も気が気じゃない。ばかばかしい、頭のおかしな老人の繰り言だと吐き捨てて帰ろうとする西村さんや小原さん、それを相島さんが必死にとめる。せっかく集まったんだし、もうちょっと思い出してみようよ、みんなで考えればなにか思い出すかもしれないじゃない、隠された能力ってやつを探してみようよ!その言葉におされて全員がその場にとどまる。さてどうする?とりあえず椅子を丸く並べようぜ!何やる!校歌でも歌ってみるか!

そこから12人の隠された能力探し。近藤さんは物真似がうまかった(田中角栄と森進一を披露)、小原さんは息止めてるの異常に長かったよね!甲本さんはじゃんけんが強かった!ということで、ここで相島さんとじゃんけん30番勝負。目も止まらぬ早さで本当に30回、じゃんけんをやるのですが、本当に全部甲本さんが勝っていた。あのスピードで間違えずにじゃんけんを繰り出せるお二人に思わず心の中で拍手。

でもそれがどんな隠された能力なんだ、ただの特技だろとシニカルなことをいって混ぜっ返すのはやっぱり西村さんの役割なのよねー。あんな物真似、俺だってできると言って田中角栄と森進一をやらされてはりましたが・・・似てねー!(笑)

そうこうしているうちにまた思い出の連鎖反応。宮地さんって電気に異常に強くなかった?絶縁体質なのよ!斉藤さんはたしか気功で皆をなぎ倒してた、ってそれを次々思い出す谷川さんはどうなのよ、そうよあなた記憶力の達人だった!野仲さんはそういえば予知夢ばっかり見てたじゃない!予知能力だよ!すごい、本当にあるんだ隠された能力!すっかり忘れてた!

能力あるある組はすっかり盛り上がり、なしなし組はだんだんダークな雰囲気に。ここで、たったひとり、主人が来られなくなったので代理に、といっていた和田の妻が口を開く。そういえば主人の友達に空を飛べるってひとがいたような・・・阿南、お前だ(笑)若干みえみえのトリックで浮いてみせる阿南さん。これはちょっと本格的にすごいことになってきたぞ。今までシニカルだった西村さんもあまりのことに「俺の隠された能力を誰か思い出してくれ!」と土下座の勢い。そういえば、と思い出す小原さん。なんと西村さんにはテレポーテーションの能力があったのです!(まじかよー!)すっかり盛り上がって調子に乗る西村。そしてますますダークな小林&相島組。そしてもうひとり。

こんなこと聞いてごめんなさいね、とその代理の和田の妻に話しかける宮地さん。もしかして、ご主人亡くなったんじゃない?そうなんです、つい先日、交通事故で。鞄のなかからお骨を出す彼女。皆で和田のことを思い出す。なんか、とにかく死にそうにないやつだったよね。そうそう、2学期にバイクに轢かれて、3学期に車に轢かれたのにピンピンしてた。彼の弁当にだけなぜかコレラ菌が、でも平気な顔してたなあ。鉄骨が頭に落ちてきたこともあったんじゃない?なのに舌噛んだだけですんだって。ほんと、不死身って感じだったよ・・・・そんなあいつがまさか・・・お骨に視線集中。ちょっと待て、あんた本当に確認したのか!?えっ!そんなこと言われても・・・!そんな、まさか!お骨を奪い取る宮地さん、今ならまだ間に合う!おーーーい、和田っちー!

ハイ、どうもどうも。
そっちはどーう?
いやー、やっぱ人生、前向きに生きてかなきゃね!

お骨と語り合う奥さんを横目に、さて残されたふたり。小林さんに相島さん。ふとひとりが思い出す。そういえば、あなた動物とよく会話してなかった?と小林さんに。試してみてよ!と獣医の彼女がもってきたハムスターを渡す。そうだ、すっかり忘れていたけど、僕は動物と会話が出来たんだ。そしてハムスターたちもあと3日で人類が滅亡するって言ってるぞ!浮かれる小林、そして落ち込む相島。思い出しても思い出してもなんにも出てこない。スプーン曲げとか!いやいや、そんなことできなかったよ。できないよ。

ひとり寂しく去ろうとする相島さんを宮地さんが止める。ちょっと待ってみんな。それでいいの?彼私たちが理科教室に忍び込んだときも、関係ないのにずっと待っててくれたじゃない。私が万引きで指導室に呼ばれたときも、ずっと待ってた。正直、迷惑だったわ、だけど嬉しかった。今日だってそうじゃない、帰ろうとするみんなを最初に止めてくれたのは彼でしょ?彼が止めてくれたから、みんな、自分の隠された能力に気がつくことができたんじゃない。みんな彼のおかげじゃない。彼はぜったいくじけなかったよ、どんなときも。

それだ。
相島さんの隠された能力、それはどんなときでもくじけない心だ!そ、そうなの?うん、もう、それでいい!

めでたく皆に隠されたパワーが見つかり、浮かれるミドリ。父が用意した制服があるんです!キャップにはUBTの文字。なんの略?宇宙防衛隊です(笑)でもおかしい、12人いるのに、キャップは11個しかない。

小林さんが重々しく口を開く。おかしいと思っていた。皆の能力のなかで、ひとりだけ宴会芸レベルのやつがいる。最初に物真似を披露した近藤さんに視線が集中。彼にだけ招待状が届いていないことがばれる。もしかしてあなた同級生のチンゲさんじゃないの?いや俺はチンゲだよ、いやタンゲだけど。でも日焼けサロンのオーナーってのは嘘だ。本当は警視庁公安課勤務、通称デカチンゲ。
毎日毎日、宇宙人が攻めてくるといって警察にきていた頭のおかしな老人のことを彼は話し出す。最終的にあんたのお父さんはその種の病院に強制収容された、あんたは隠し通したかったみたいだが。いろんな専門家に聞いたよ、ケンタウルス座のなんちゃらかんちゃらから宇宙人が攻めてくる可能性は、100パーセントない。

でも実際に私たちにはすごいパワーがあったじゃない、そういう皆に彼は舞台にかかっていたしろい布を取っていう。ここは研究室じゃない。シアタートップスだ。そして向こう側には客席がある。お前たちみんな夢を見てた。人生の負け犬たち。恩師からの手紙。地球の危機を救う。お膳立ては出来ている。お前たちはただ熱に浮かされていただけなんだよ。

父は狂ってなんかいなかった、と泣き崩れるミドリに近藤さんは言う。これで終わりにしろ。あんたらみんな、今日あったことは忘れることだ。

今までの熱狂が嘘のように、皆なにかを失ったような、所在なげな顔をして立っている。タクシー運転手の小原さんが声をかける。それにしたがって三々五々、部屋をあとにしていく同級生。去っていく彼らに甲本さんは必死で、飯でも食べに行こう、せっかくなんだから、と声をかける。賛同してくれたのは宮地さんと小林さんだけ。立ち尽くす西村さん、奥の椅子に座って遠くを見ている相島さん。表に大自然があるから、先に行って席とってるから!残された4人。ふと宮地さんが言う、あれはなんだったの、本当にただ夢を見てただけだっていうの?そんなのむなしい。西村さんがそれに応える。そうでもない。夢を見ることが出来ただけでもよかったじゃないか。少なくとも俺は。

うずくまったまま泣き続けるミドリに近づいて、声をかける相島さん。大丈夫だよ。何が大丈夫なの、と混ぜっ返す宮地さん。大丈夫だよ。なんか、大丈夫な気がするよ。獣医の谷川さんがハムスターを忘れたことに気がついて戻ってくる。最後に挨拶をしたい、という小林さん。ハムスターの名前を呼んでさよならを言う。西田さんが怪訝な顔でどうして名前を知っているのかと尋ねる。この子たちが教えてくれたんですよ。
暗転。

ナレーション。ちょうどその頃、ケンタウルス座のなんちゃらかんちゃらからでは、地球侵略に向けて1億2000万もの宇宙船が出発しようとしていた。人類の滅亡まで、あと3日。
それでは、東京サンシャインボーイズ「returns」、第二部のダイジェストをご覧ください!