君の道

周回遅れどころじゃないぐらい周回遅れな話ですが、堺雅人さんの情熱大陸。その、なんで思い出したかっていったら今朝こんなニュースを見たからでっす。
ユニコーン「サラウンド」が映画「南極料理人」の主題歌に
これあれなんですよ、記事の中にもありますけど音楽を阿部さんが担当されるんですよ。わー。すごい、なんか、気になる。そしてこの映画の主演が堺さんってわけです。

番組の中で池田鉄洋さんと「憑依型の役者にあこがれる」って話をしていたのがすごく印象的でしたね。しかし、テレビで普通に聴いてもめさめさいい声やな、イケテツ。そう、たしかに堺さんって憑依型じゃないよなーとおもいます。すごく頭をつかって役にアプローチしていきますよね。それはご本人も仰っていたとおり、強みでもあり、弱みでもあり。

あのー「お父さんの恋」の副音声で成志さんがしていた話がすごく印象的だったんですけど、あの舞台の中で堺さんはお姉ちゃん役のひとに平手で叩かれるシーンがあって、それで多分推測するに女優さん側が実際に叩くより叩く振りを選んだんだと思うけど(堺さんはそういう場面で「実際叩かれるのはちょっと」とかいう役者じゃない、絶対)、あるときその女優さんがいつもなら右手ではたくのに、その日に限って左手が出てしまったらしいんだよね。で、堺さんはほんとうなら右のほほを打たれなければならないのだが、ついいつもの癖で左のほほを打たれてしまった。

その話に、演出家と作家のふたりは「それはしょうがないよね〜」と同情的だったのだが、成志さんは、いやそれはしょうがなくはない、そこはちゃんと相手を受けきれなきゃいけない。堺もそれがわかってるからめちゃめちゃ落ち込んでいた、とあののらくらな成志さんに似合わぬきっぱりとした口調で言っていて、ああ、なるほどなあと思ったんだった。

97年に堺さんが出演した舞台「コーマ・エンジェル」は鴻上さんのロンドン研修出発前最後の作品で、鴻上さんの弟さんがその舞台裏のドキュメンタリを録っていて、その様子はテレビで放送された。その時の堺さんは、まあ多分渡辺えり子さんはじめいろんなひとにダメだしされていたろうと思うけど、ほんとうにヘタだった。「自分が台詞をどう言うかしか考えてない」ってよく言われてたよね。

でもだからこそ、ここまできた堺さんってのは心からすごいと思います。演劇の道をめざす若者に、個人的には止めます、という話をしたときに言っていた、自分ひとりのちからじゃどうにもならない、いろんな運だったり、風だったり、そういうものがないとどうにもならない、でも自分にできるのはオールを漕ぐことだけだという言葉。それはつまり堺さんはつねにオールを漕いでいたということだ。才能とは夢を見続ける力のこと、その言葉を借りれば、堺さんにはまぎれもなく、超弩級の才能が備わっているということなんだと思う。

今年はいよいよ新感線にご出演ということで、まあチケット取れるんかいコレというツッコミはさておき、とにかくまずいのうえさんの求めるように動くことができるか、が問われるいのうえ演出にかれがどのように添うのか、または添わないのか、心より楽しみにしている次第でございます。