「牡丹燈籠」

前日の「怪談乳房榎」と「牡丹燈籠」、怪談on怪談だー!とか言ってたけどそれだけじゃなかった。円朝on円朝だ!
というわけで二日連続で円朝を見てしまいました、舞台のうえで。

先月の「奇ッ怪」でこの牡丹燈籠の「お露と新三郎」の部分については頭に入っていたのですが、この物語の芯が新三郎の小間使いである伴蔵にあったとは不勉強にして知りませんでした。これがもともとは落語の噺だったってすごいなあ。何日もかけてやったというのもさもありなん。しかし、これは結末を見届けたくなるよねえ。

いのうえ節だなあと思う演出もあちこちにありましたが、しかしきわめて真っ向勝負、という印象。怪異を見せるのに映像を使いまくるかな、と思ったけどここのところのいのうえ演出でもっとも映像頻度の少ない舞台だったかも。そういうところは私の好みでした。回り舞台はこれでもか!というほどに回していましたね。二幕目のセットとかすごくいい装置だなーと思いました。そういえば、いのうえさんってこれが初コクーン?だとしたらご自身はもっといろいろ試したかったかもしれないですね。

役者。いやー、下のエントリで遊眠社の本を紹介したんですけど、そこでも伊藤蘭さんがかつて遊眠社の舞台に出た経緯についても触れられていて、何しろキャンディーズ解散後、どこをどうやっても注目されるトップアイドルだったわけですから、私も昔の年表とか見るにつけ、なんでランちゃん?とは思っていたんでした。でもその遊眠社の本で、ランちゃん自身が遊眠社のファンで是非出たいとオファーし、それに対して遊眠社側は「あくまで劇団員と同じとして扱い、掃除や雑用もしてもらう」という「芸能人待遇ナシ」を打ち出したところ、それをランちゃん側はすんなり了承したっつーんですね。そして稽古期間中、ちゃんと稽古場の掃除や雑用をしていらっしゃったと。

そんなこんなでタイミング良く初めてお目にかかります伊藤蘭さん。しかし、見て思った。こ、これは、野田さんが気に入って使うはずだよ!!と。どんぴしゃじゃないですか。コケティッシュな容姿、声。それなのに、俄然ドスの効いた芝居も見せる。もう、野田作品の主演女優の系譜じゃないですか。

ちょっと声をやってるかな、という部分はあったけど、しかしあの段田さんと五分に渡り合ってみせるのだから(「はがしておやりよ」と言い切るあたりのトーンの変え方絶妙)すばらしい。あの唆しっぷりはマクベス夫人も彷彿とさせますね。

段田さんは相変わらずの一枚上手っぷりで、どこでもっともそれを感じたかというと二幕目の冒頭、お国と源次郎を前にして施餓鬼をしてやろう、とお金を投げるときのあの、絶妙なまでのいやらしさ!!!「はい、お取んなさいよ」ってそれだけなのに、ああ伴蔵はもう一幕目の伴蔵じゃないんだ!ってことがあの一瞬でわかる。すごすぎ。

千葉さんの源次郎と秋山さんのお国はもっと物語に絡んでもいいかもー!というぐらい場面が限定されているのがファンとしてはかなしいですが、お二人の持ち味であるところのねっとり感はしっかり主張しておられて流石だな、と。そういえば、瑛太くん初舞台なんですよね。あのーホント、所作とかはまだまだな部分勿論あるけど、役者の命といっていい「声」がいい、というのは財産っすよね。張ったときより、静かに喋ってるほうが声の良さが活きる感じがしました。今年は年末ケラさんとなんだよね。がんばって。