「ネジと紙幣」

あと大阪公演があるんですよね。隠しませんが(ベースとなる物語は提示されているので)、未見の方はバレ注意。

女殺油地獄」をベースに翻案された脚本で、基本的に物語の構造は「女殺油地獄」をまるっとなぞっていると言ってもいいほどなのですが、舞台が現代になることで絵空事感がなくなるというか、歌舞伎などでこの演目を見るときと較べて物語と自分たちとの距離が近すぎる感じがあった。「どこでおこってもおかしくない」という空気が、余計この救いのなさを際だたせているような。

そういう意味では倉持さんの脚本は見事ですよね。あと、なんとなくガルシア・マルケスの「予告された殺人の記録」を思い出させるなあと思いました。
森山未來くんが出てる、というのは勿論覚えていて、あとともさかさんも出ていたはず、と思ったけどその他のキャストをまったく覚えておらず、しかも席がかなり後方だったので、判別つくかなコレ?みたいな感じあったんですが、細見さんはやっぱ出てきた瞬間に細見さんとわかった(笑)やっぱいっときでもあれだけ回数見てたら刷り込まれるわな。あと冒頭の部分では長谷川さんに気がつかなかった〜〜。あの地上げ屋風情で、わざとらしい猫なで声出した瞬間にあーーっ!ハセじゃん!!みたいな(遅いよ・笑)。
実情がぶちまけられてからの根岸さん、お見事。田口さんのガン切れ具合もよかった。主役のお二人はこれはどちらも精神的にヘビーだろうと思いますが、よく踏ん張っていたなあと思います。未來くんの役はまったくもって救いがなく、この人物を生きるということそのものが相当キツいんじゃないかと思いますが、ヘタに客に媚びたような部分がまったくなかったのはすばらしかった。始まりのことをいつも考える、という台詞はよかったなあ。始まりを考える、どうしてこうなってしまったのかを。でもそれを考えても結局その始まりをまた探してしまう、だからいっそ、終わりを考えたほうがいいんじゃないかって思えてきた。
クライマックスのふたりのシーンで、ともさかさんがその台詞を受けて「これから先なんて最初からなかった」というようなことを言うのですが、このいっこ前の台詞がちょっと聞き取れなかった。ごめんね、とかいうところ。あの台詞気になったなあ。
殺人を終えたあとのシークエンスを、表と裏でまるっと見せる演出がすっっごく好きです。あれよかった。殺人が露呈することよりも手についた血を落とすことに専心する殺人者の姿が浮かび上がって、幕。