歩く花

ALL TIME SINGLES~SUPER PREMIUM BEST(DVD付)

ALL TIME SINGLES~SUPER PREMIUM BEST(DVD付)

本題に入る前に。
私がTHE YELLOW MONKEYというバンドに入れあげていることは皆様先刻ご承知の通りなのですが、そのTHE YELLOW MONKEYの写真をずっと撮ってくださっていたカメラマンが有賀幹夫さんという方で、この有賀さんという方はブルーハーツの写真もずっと撮っていた方なんですね。で、その有賀さんのblogを個人的によく拝見してるんだけど、有賀さんは当然このブルーハーツのALL TIME SINGLESにも携わっていらっしゃったわけです。で、このALL TIME SINGLESのライナーノーツがとてもよい、と。ライナーノーツのひとつの理想のような、と。で、名前は明かさなかったんですが「有名な作家のかた」と紹介されていたんですよ。ふーん。有名な作家、誰だろう。

さて本題。
先日twitterでたまたま鴻上さんのアカウントを発見しまして、もちろんフォローしたんですが、そして遡って読んだんですが、ほんの少し遡ったところに「ブルーハーツのライナーノーツを書いた」とあるではないか。
ん?
ってことは、有賀さんの書いている有名な作家って・・・鴻上さんなの!?

もともとこのベスト盤は買うつもりなかったっていうか、アルバム持ってるってのもあるし自分の好きな曲が入ってないってのもあるしで、しかし鴻上さんがライナーノーツを書いたとあっちゃ(そしてそれを有賀さんが絶賛したとあっちゃ)買わないわけにいかんだろうっていう。

私とブルーハーツの出会いは1988年、第三舞台の「天使は瞳を閉じて」だった。「行くな!」「えっ、誰かなんか言った?」「さあ、よくわかんないけど、イッツ・ショータイム!」その瞬間に流れる「人にやさしく」は忘れられない。「青空」を聴くとどうしてもあのケダモノ王とケダ3の至上の名シーンが浮かんでくるし、あの「トランス」の劇世界をそのまま提示したかのような「夕暮れ」も、すべて私は鴻上さんの舞台のうえで出会った。

それにしてもこのライナーノーツを鴻上さんに書いてもらおう、と提案したのは誰なんだろう。「リンダリンダ」で鴻上さんはブルーハーツの曲だけを使ったミュージカルをやっているし、ANNをやっているころから鴻上さんのブルーハーツ好きは有名だったので、候補にあがってももちろん不思議じゃないけれど、でもブルーハーツのことなら、もっと俺が、というひともたくさんいたんではないだろうかと思う。

鴻上さんのライナーノーツは、ブルーハーツがどんなバンドで、どれだけの音楽的な意味や価値がそこにあって、どれだけの影響力があったか、などということには一言も触れていない。ただ、自分にとってのブルーハーツを淡々と書いている。そして、あなたにはあなたのブルーハーツがあるだろう、と。
それは舞台を作る上でも、鴻上さんの変わらないスタンスだなあと私はライナーノーツを読みながら思った。ライナーノーツの最後の「どこかであなたと出会ったら、かけがえのないブルーハーツの話をしようか。それはきっと、幸福な時間に違いない。」というフレーズも、まさに第三舞台旗揚げのときの「ごあいさつ」を彷彿とさせる。

長年、自作の舞台の初日に「ごあいさつ」という形で文章を書いていることも無関係ではないとおもうけれど、こういったサイズのテキストを書かせて右に出るものはない、と思うほど、鴻上さんは時にひりひりとした、時に優しさにあふれた文章を書く。ときどき、すごく脱線したように見えたりするのも相変わらずで、読みながら私はなんだかうれしかった。

ブルーハーツの音源を聴くのも久しぶりだったけれど、完全に世代ど真ん中だし、やっぱり懐かしいなあと思う部分もあり、今聴いてもまったく色褪せていない、いつまでも有効な音楽だよなあとも思い、まさに「私のブルーハーツ」と向き合う作業をさせてもらえたなあと思います。

初回生産限定だったので、もう売ってないかなあと思いつつタワレコに行き、案の定棚はすっからかんで、ライナーノーツの誤植*1に関するお詫び文だけが虚しくはためいていて、もー諦めちゃおうかなって思ったんだけど、高島屋の11階に新星堂あったな・・・と思い直し期待せずに見に行ったらそこにあった。ずらっとあった。まだけっこうあったよ。やっぱりこういうのってタワレコとかのほうが良く出るんだなあ、と思った次第。

しかし、鴻上さんは自分でも「幸せな時間だった」とtweetされていたけれど、間違いなくだれよりも鴻上さんがこの仕事を楽しんだに違いない、とファンとしてはにやりとしてしまいますね。長年の想いが叶っておめでとう!

*1:http://www.tkma.co.jp/tjc/thebluehearts25th/teisei.htmlこちらで詳細が。交換してもらえるらすぃよ