「2番目、或いは3番目」NYLON100℃

まだ中日やけん、ネタバレ気をつけて!

冒頭、「それとも善行を施すってのはそんなに気持ちのいいものなのか」という「LYNX」の台詞を思わず思い出しました(笑)しかし、自分たちが「いちばんひどい」わけではない、すくなくとも、「2番目、或いは3番目」だとおもいたいその弱者が弱者を見る心理、みたいなものは結局のところ物語の大きな部分は占めていませんでした。書いていく途中でケラさんの中で変わっていくものがあったのかな。

しかし、いつだって悲劇を探したい、他人の中にだけでなく自分の中にも、そうすることで安心したい、今は自分がその「悲劇」の中にいるわけではないから、甘い不幸の蜜を想像して満喫したい・・・というような切り口も、もっと見てみたかったなという気もします。

「神様とその他の変種」のあの鮮やかな切り返しというか、反転ぶりを思うと、今回はどうももやもやが残る感じです。そのもやもやがなんなのか見ている間はよくわかんない。けど、一カ所あれ?って思ったのはあの姉妹の「赤い絵描きさん」をめぐる話のとき。あとハンナを巡るお見合いのシーンとか。普通に見れば全然まっとうなんだけど、その執着心のなさはなんなんだ、その諦めのよさはなんなんだ、心臓をとられると皆が言う、死ぬとは言わない、だが埋められたといって嘆く、その心臓への執着心のなさと、死への恐怖の違いはなんなんだ。そのずれは時には面白い、面白いのだけれど、笑ったあとで不安にもなる。

3時間30分近くありますが、そして普通に考えたら1回ぐらい「長いな」とか考えそうなものですが、ほんと全然気にならないんだよなあ。あえてドラマティックな展開になりそうな部分を見せてないのに(ダーナが手紙のやりとりをしていた相手のことを知るとことかさ)、こうもぐいぐい見せられるっていうのはすごいなあと。

ナイロンの役者陣は盤石という感じ。完全に安心して見てられます。誰が客演に来ても大丈夫、というような安心感。大倉さんはあの独特の間、台詞回し、久々に炸裂させてましたね(笑)後半はもう出てくるだけで期待感に満ちた目で見てしまうレベル。

あと冒頭で訪問者達は「三人姉妹」の衣装を着てきますが(理由は劇中で明かされる)、最後の「生きていくんですよ」はそのまま三人姉妹の最後の台詞と同じですよね。うーんもうちょっとこの戯曲について理解があったらまた違う視点があったかも。

ラストシーン近くでマギーが「童話の一節」を暗唱するシーンよかったな。さりげないけど、研ぎ澄まされた言葉で書かれているな〜という感じがしました。