「表に出ろいっ!」NODAMAP番外公演

最近の野田さんのインタビューや、「キャラクター」の作品から当然予想しうる話ではあったんだけど、ああうう完全に他人事ではない、という見えない矢印がぐっさぐっさと景気よく自分に刺さるのを感じないではいられませんでした。以下バレがあるので畳みます。見る予定の方回避で。バレ見ない方が面白く見れると思うので。
野田さんと勘三郎さんはそれぞれ舞台人としてまったく違う顔を持ってはいるけれど、「役者」という切り取り方だととても似ている部分もたくさんあって、サービス精神、それと裏返しの落ち着きのなさ(笑)、そしてもちろん圧倒的な牽引力、その二人があんな狭い舞台のうえでこれでもか!とやり合うわけですから、そりゃもちろん楽しくない訳がない。

登場する3人の家族は、全員「何か」を求めている。それはアイドルであり、グッズであり、夢の国だったりするわけですが、その「何か」に夢中になってがんじがらめになる彼ら、笑えるし、滑稽だし、ああ、ああ、でも。それ私。私です。それがロックであろうが、そしてそれがたとえ芝居であろうが彼らと私はなんにも変わらない。自分の生活の一部をまるっきり自分と直接関係のない「何か」に預けている、という点で、私は彼らとなんの変わりもないのだ。アハハと笑った分だけイテテと沁みる、なんかそんな感じの前半でした個人的に。

それでもまだ「牧歌的」と言えた家族の滑稽なやりとりが「書道教室」というキーワードを境に一気に不穏な空気を纏っていくあたりはすごい(もちろん、「キャラクター」での下敷きあっての話ではありますが、その後に出されるキーワードだけでも充分不穏な空気は伝わります)。野田さんは、あれかな、その「何か」への信奉の危うさをずっと伝えているような気がするけど、でもそれは違う、違うんですと弁解したい私もおり。

1時間20分、圧倒的に笑いで満たしながらほんのひとつのきっかけで空気を醒ます勘三郎さんや野田さんの場の掌握の仕方はさすが。娘役は黒木華さんの方を拝見しましたが、きりっとした佇まい、あの二人に負けない勢いをきちんと表現していてよかったです。