「ハーパー・リーガン」

ひとりの女性が、自分を取り巻く「理不尽さ」のひとつをきっかけに、自分を決めている枠の外の世界へ踏み出していく。以下いちおう畳みますー
のっけからArcade Fireが使われててうおお!と思った(笑)
留学前あたりから続いている、長塚さんの「安易な劇的要素一切不要!」なトーンは持続していて、いやあここだけの話(ってインターネットやがな)私の周りでも多数の方がそれはそれはもう気持ちよさそうに沈没されていらっさいました。

しかしこれだけ演技から過剰な要素を抜き去っても、きちんと届けなきゃいけない部分は届けさせることができる、っていうのはすごいなと思ったなあ。役者さんも贅沢な使い方だったと思います。主演の小林さんももちろんいいですが、特に山崎一さんのうまさは、もうそりゃいろんな作品で拝見していてもちろんわかってるんだけど、改めてほんっとにうますぎるなこのひと!と思いましたです。あの「だめかも」は良かったよーもうすんげえときめいた、あの一言だけで。くはー。

淡々とした芝居が続く中で、役者のカラーとしてもキャラクターとしても一種異質だった福田転球さんが、そのはたすべき役割を十全に果たしてらっしゃってよかったです。つーかとてもセクシーだった、うふふ。何もしなくてもセクシャルな匂いが出せる役者さんって好きさ。

しかし均一化されたトーン、殺風景な壁を模した風景が、最後の最後に一気に表情を変えていくあたりは、それまでとの落差もあって圧倒的な印象を見る者に残します。あれが「彼女」なのか。あれが「家」なのか。その美しい光景と、その中で語られる夫との対話になぜか涙がにじんできてしまったり。うーん、長塚さんの術中にまんまとはまっている予感。