「法界坊」

去年の名古屋平成中村座でも拝見しているので、さすがに大幅な変更はなしといったところ。そのときも借景が城でしたしね(笑)とはいえ、今回とは距離がまるで違うのですが。

皆さん役が手の内に入ってらっしゃって、安心して楽しめるのはもちろんなんですが、毎回思うのはあの鯉魚の一軸とお組をめぐるすったもんだ、法界坊と勘十郎と正八のどたばたは何回見ても笑わずにはいられない。笑いのスタンダードってこういうことなのかっていうね!今回一番ヒットだったのは、借りた百両が贋金だとわかって驚く要助(勘太郎くん)にいちいち「今シエーつったよ」とかツッコミをいれてたやつ。「来年おやじになるんだから!」と言いながらドツいてたりもありましたね(笑)そうそう「男の生き面を〜」「あれ、どこかで聞いた台詞だな」ってやりとりも!

しかし、どんだけケラケラ笑っていても、そのあとの場面での法界坊の底抜けに明るい凄惨さはギャップがあるだけにぞっとする。いやギャップというか、ケラケラと笑っていた裏側にではなく、その延長線上のこの残酷さがあるとわかるところがぞっとするのかもしれない。刀を首に当てた要助の手を掴んで、さあ斬れ、首を斬るか、腕を斬るかと迫る様は、刀をあてられているのがどちらの首なのかわからなくなるぐらいだ。こういう芝居を観ると、やっぱり勘三郎さんさすがだなあとおもう。

野分姫と法界坊が合体した霊になるとこ、穴の中からゆっくりとうかびあがってそのまま真っ直ぐ上にあがっていく演出(台座が上がっていく仕掛けだったと思われる)で、足下が真っ暗で宙乗りとも違う、上空にふっと浮き上がるような見え方がよかったです。

大喜利は背面を大きく開けて、吹き出しの桜吹雪、そのバックには大阪城、というなんともいえず豪勢な借景でございました。大満足。そして、相変わらず勘太郎くんの要助はまったくもって優男であり細い手首が完全にエロ過ぎるのでけしからんもっとやれと思いました!(そんな〆かい!)