夏祭浪花鑑・千秋楽

初日と楽を見るというこれ以上ない贅沢な組み合わせ。初日の浮き足だった感じはもうどこにもなく、どっしりとしたいい芝居でした!客席も楽日にしては落ち着いていたような。台詞回しのスピードは落としてないんでしょうけれど、間と呼吸が合うだけでこんなにぴたっとパズルがはまるようになるのね!と改めて思いましたです。

日程の後半はお辰を七之助くんが、磯之丞を勘太郎くんがやってまして、感情の持っていき方なんかはやっぱり勘太郎くんのほうが腑に落ちるなあと思うところもあるんですが、お辰という役自体には七之助くんはすごくよく沿ってると思います。そうそう、細かいところなんですけど、「立たぬぞえ、立ちませぬぞえ、もし、三婦さん」のあと、三婦がうちわで畳をぴしゃりとやるんだけど、そこで叩かれた場所を「何を叩いたのかな」みたいにのぞき込む、っていうのは初めて見たのでこういうパターンもありなのか、と。

細かいついでで言えば、長町裏の泥場で義平次を殺したあと、泥に足をとられてバッタリ、「悪い人でも舅は親、おやじどん、ゆるしてくだんせ」で団七が手を口に当てて泥のなかに呼びかける、って芝居が百発百中で私の涙腺を刺激するんだけど、初日に拝見したときはそれがなくて演出変わったのかなあと残念に思っていたんですが、千秋楽はやってました。よかったー。

さて、今回の大詰めの幕切れですが、8年前の扇町、あのときあのコヤを勢いよく飛び出て駆けていったあの演出と、シアターコクーンやNY、その後幾度か見られたパトカーや警察(ヘリってのもありましたかね)(音だけですけど)が現れてストップモーション、という演出。これ私のなかでは前者が「明日に向かって撃て」型で後者が「俺たちに明日はない」型ということに勝手になっているんですけど(笑)、その類型に当てはめればこれはやはり「明日に向かって撃て」型ではないかなと思います。追ってくる捕り手たち、飛び交う縄、舞台の奥へ、客席へ、そしてまた舞台の奥へと逃げる団七と徳兵衛。後ろには大阪城、そして大阪城に向かっていく橋が舞台の奥に据えられている。その橋にむかって一心不乱に駆けていくふたり、刹那、その橋の向こうへジャンプして、一瞬で彼らの姿がかき消える。そして同時に暗幕が降りて、客席は暗闇の中。飛び交う歓声、指笛、拍手。
・・・もうそろそろネタ切れにもなるかしらんと思うのに、いやまあ毎回毎回よくもこれだけ見せてくださるものです。まったくすごい。ふたりが橋の向こうに消えた瞬間、わけのわからない歓声が私の身体を駆け巡りましたよ。なんという劇的興奮なのかと。これだから「夏祭」追っかけはやめられない(笑)

そうそう、平場の前方席は泥場で水やら泥やらが飛んでくるんですけど、初日は思えばおとなしいもんだった!楽日はもう水も泥も大サービスだった(笑)ナメてカッパ着ないで見てたリーマンの背広が悲惨なことに・・・みんなちゃんと用意されたものは利用しようね・・・

千秋楽ということで、カーテンコールでは千秋楽おめでとうの旗が出て来たり、勘三郎さんの胴上げがあったり、役者さんが客席を一周回って皆とハイタッチというお祭り三昧。法界坊のカーテンコールでも仰ってましたが、来年9月にまた大阪に来ます!とのことでした。夏祭はとりあえず次は3月博多座でございますね。あはははーいやー結局行っちゃうんだろうなあ(笑)