テレビでエンゲキを

上質の教養・娯楽に重点 NHKBS、2チャンネルに統合・再編
一昨日でしたか、このニュースが出て一時期わたしのTLも騒然としていたふうでした。その後「まだ決定ではないようだ」「意見を送って欲しい」とのtweetがあって、というのが今の状態でしょうか。

というわけなのでこちらからどんどんご意見ご要望をおくってみてほしい。メールだと字数制限は400字だぜい。

奇しくも下のエントリでNHKに「ザ・ホワイトハウス」の放送続投お願いメールやら電話やらしたという話を書いてますが、そのときも最初はシーズン1のみで打ち切られる予定だったのですよ。だからNHKからも「放送は終了しました、予定はありません」の一点張りだったの。それが数少ない(っていうな)ファンの熱心かつ絶え間ない草の根運動のおかげで「検討中です」に返事がかわったときはうれしかった!

ひとつのテクとして言われていたのはメールよりも電話のほうが効果的(報道でも言うのって電話の数ですよね)、怒りをぶつけてもしょうがない、あくまで丁寧に、真摯に番組の継続を望んでいることを伝えること、そして決してあきらめないことです。諦めたらそこで試合終了です。安西先生、(テレビで)芝居が見たいです…!

演劇という「その場所に足を運ばなければ見ることが出来ない」メディアにおいて、テレビ放送というのはまだ演劇に出会っていない観客にとって、とても大きな糸口です。芝居、というものへのハードルは高い。それは、創り手の方々が思っていらっしゃる以上に高いものです。演劇を見ることを習慣としていない人間を「こちら側」に引っ張ってくるのはほんとうにたいへんなんです。もちろんテレビで放送されているものを見ても、全員が芝居好きになってくれるわけはない。なかには「こんなもんか」と本物の舞台を観ないウチからジャッジしてしまう人もいるかもしれない。でも何人かは、あれっ演劇ってこんななの、思っていたものとちがう、面白そう、そう思ってくれるかもしれない。それが0.1%でもいいんです。それだけでも圧倒的な数の力を持つ。それがテレビというものの凄さで、その数の力は演劇にはないものなんです。

テレビで見られるから、と観客が劇場に足を運ばなくなることを危惧する、なんて方はよもやいらっしゃらないと思いますが、もしいらっしゃるのならそれは大きな間違いですと申し上げたい。シアターゴアーという人種は、その芝居がどうしても見たいもので、自分が見られる環境にあるなら、這ってでも行きます。それは劇場で見ること以上の体験はないということを知っているからです。冗談めかして口にする「テレビでがまんしよう」というのは自分をなぐさめるためだけの言葉です。逆に言えば、「テレビでやらないなら行く」というジャッジはしないということです。行かないとジャッジする理由は大抵べつのところにあり、そこにテレビ放送の有無は関与しないことが殆どなのではないでしょうか。

正直に言えば、わたしはおそらくNHKがいままで放送してくださった数々のプログラムから、もう十分すぎるほどの恩恵を受けたんだとおもいます。私が劇場に足をはこぶようになった直接のきっかけはテレビではなかったですが、それでも自分が観たくても観ることの出来なかった舞台、もう一度観たかった舞台を、そして放送というきっかけがなければ出会わずじまいだったかもしれない舞台と、ほんとうに沢山の素晴らしいプログラムを体験させてもらった。だから、もしここでNHKがバトンを置くといわれても、私自身はもしかしたらあきらめがつくのかもしれません。

でも、まだその恩恵をじゅうぶんに受けていないひとたちもいるわけです。これから演劇に出会うひとたち。そういう機会が喪われてしまうのはなんとも惜しい。惜しすぎるのです。

たとえ今期の改編で番組が消えてしまっても、折に触れ要望メールを定期的に出すことは続けようかと思います。NHKがなくなるわけじゃないのだから。

芸術劇場、ミッドナイトステージで放送された舞台の中で、個人的に忘れられないのは二兎社の「こんにちは、母さん」です。冒頭を見逃して、誰が出ている舞台かも知らないで、あっ平田さんが出てる、そう思ってちょっとだけ見てみた。私は翌日は早番で、ぜったいに寝坊できない、と頭ではわかっていたのに、途中から「録画して明日見ればいいんだ」と思ってリモコンを握ったまま、録画ボタンを押すこともできずに最後まで見た。あの放送がなかったらその後二兎社の舞台を見に行くことはなかったかもしれないと思います。

もうひとつ、ミッドナイトステージで放送された「朝日のような夕日をつれて'91」。これは私はもちろんビデオを買っており、そして今やDVDも持っているわけですが、なぜこの放送が特別かというと、音楽が原曲のままなんです。セルではないので楽曲の差し替えがなされていない。第三舞台と音楽、というものは個人的に切っても切れない関係だと思っている私にとっては、この放送はお宝そのものでした。

演劇を愛するひとたちの声ができるだけ届くといいなあ、と祈りつつ。