「港町純情オセロ」新感線

まずはなによりも祝!じゅんさん御復活!なわけで、のっけからネタにされてましたね。うふふ、お帰りなさいーい!お待ちしておりましたー!

原作は勿論あの「オセロー」なわけですから、話の筋がどうなっているのかは最初からわかっているわけで、観客はころころと転がっていく彼らの運命をじっと高みの見物、といいけばいいのだけどなかなかそうはいかない。先がわかっているからこそのもどかしさ、ネタが観客にだけばらされているからこその居心地の悪さというのはあるわけで。

実際、私がシェイクスピアを苦手にしている原因はここにあるのではないかという気もしないでもないのですが、こういうすれ違いっつーか勘違いの上塗りみたいなのがやなんですね!ちょっと!待て!おまえら!話を聞け!とか思っていりいりいりいりしちゃうっていう。そしてシェイクスピア御大はこういった思い込みすれ違いドラマを書かせたら文字通り世界一なのだからして。
なので、それを翻案している本作も当然くそーなんだよみんなどう考えても伊東が悪者だろいやだから話を聞けよおまいら、と定石通りいりいりしておりました。ってどこからどう見ても単なるいいお客さんじゃないですか。

オセローをまるっと戦前の関西のヤクザ抗争に置き換えた翻案はまったく違和感なく観ることができたんですけど、どうも脚本の青木さんのトーンといのうえさんのトーンが合ってないのでは、と思うところもしばしば…なんだろう、同じ小六でも砂場で遊んでるグループと友達のうちで本とかゲームとか持ち寄って遊んでるグループの違い的な…余計わかんないですよその喩え…
ところで私が観た回に青木さんもいらしてたんですけど、冒頭の病院での「青木っていう頭のおかしな作家がいて」っていうのは毎回やってるんでしょうか、それとも青木さんがいたからこそのネタでしょうか(笑)

しかし、この布陣だと、新感線的な笑いをほぼじゅんさんと粟根さんで背負って立つことになるので、やっぱりもう1枚欲しいところだよねーと思ってしまうのは劇団ヲタ心というやつなのでしょうかねえ。

オセローの主役はイアーゴだよねというのは割と誰でも思ってることなんじゃないかという気がしますが、哲さんの悪っぷりがほぼストレートパンチ一本だったのがなんというか意外な感じでした。もっとひねりを効かせてくるのかと思っていました哲さんだけに(哲司さんをなんだと思っているのか!)

そんな感じでちょっと引き気味の姿勢で見ていたんですけど、結局のところじゅんさん演じるオセロの最後の押し芸にあっという間に押し倒されてうっかり涙ぽろ、みたいなことになってて自分でも驚きました。なんなんでしょうかあの喚起力。石原さとみさんのモナはもちろん最強にキャワだったし、じゅんさんとふたりのバカップルぶりがすごくほほえまだったってのもあるのでしょうが、それにしても泣くことないだろう自分。いやいや恐れ入りました。

Mっ気を出すことが多い右近さんのドSキャラなかなかよかったです。やっぱりSとMは表裏一体やね。そして思わずtwitterでも呟いてしまったけど、河野さんの役がかつて見たことない!というほど激シブで、しかも序盤の立ち回りで川原さんやら前田さんやらを打ち倒すというレアぶりでした。あんなに卑怯じゃなくて真っ当に強いサンボちゃん新鮮!