「少しはみ出て殴られた」MONO

  • テレピアホール Q列5番
  • 作・演出 土田英生

MONO本公演。舞台は刑務所。しかし、およそ刑務所のイメージとはほど遠く、入所しているのも軽犯罪者ばかり、看守とは和気藹々。しかし、国の東半分が独立し、その境界線上に立つ刑務所はなんだか宙ぶらりん。それでも最初はなんだかんだとおもしろがっていた囚人たちだったが…。

以下ネタバレです。
いっやー、久しぶりに土田さんお得意のなんともいえない人間の「いやったらしさ」を存分に味わった作品でした…。あれだ、「橋を渡ったら泣け」を思い出した。閉鎖された空間、その中から出てくる強者と弱者の構図。「時間」と「場所」を曖昧にして、ここではないどこかの、今ではないいつかのお話というテイをとってはいるのだけど、だからこそ余計その人間関係の構図の不変さが痛い、痛すぎる。

最初はほんの冗談だった「外国ごっこ」が次第にエスカレートしていくんだけど、それがもうイヤになるくらい自然に描かれていて、絶対「こんな人いないよ」とはならない、あり得る、これはあり得る、だからこそもういたたまれない、みたいな気持ちになりました途中…「誰か!どうにかして!」と叫びたくなった(笑)

線を引き、陣地を決め、物を取り合い、領地の拡大を図り、そして、最後には武器が出てくる。

しかし、こういったどこか「終末感」のある設定は他の作家も書かれているけれど、やっぱり土田さんは土田さんで独特というか…。基本的に、誰にも明確な悪意がないのが余計コワイ。あと、土田さんは物語の「転換点」は書かないですよね。この芝居でも、勢力逆転の瞬間は全部書いていない。それでも十分劇的に見せられるんだから、すごいよなあ。

最後にはちゃんとこちらをほっとさせるシーンを作ってくれるんだけど、いやあしかしそれにしても土田さんの筆に唸りました今回は。