「THE BEE japanese version」NODA MAP

  • 水天宮ピット E列9番
  • 作・演出 野田秀樹

キャストを変えて再演、今回は英国版はスルー。いや正直日本版も観るかどうしようかなかなか決心つかなくて、つかないままにありとあらゆる先行を見送り、一般で何の気なしに見てみるけど当然取れない、もういいやーみたいな感じでした正直。作品として嫌いなわけではなくむしろ最大のリスペクトをもって傑作だと言い切れるのですが、それでもこんなに見るものを怯ませるのだからすごい。結局、これでダメだったらあきらめよーとかけた当日券の電話のキャンセル待ちに繋がり、こうして拝見できたという次第。

キャストが変わったことによる変化ももちろんあり、そもそもラストを補足している(と野田さんが仰っている)のですが、しかしこの芝居を観ていて私の心がもっとも疲弊するのは、あの鉛筆の音でも暴力衝動でもなく、ただそのことにすら慣れていく、というその一点に尽きるのではないかという気がしました。自分だって今もしかしたら、指を差し出し、差し出され続けているのではないか、誰かの指の上に自分は立っているのではないのか、そしてそのことに慣れているだけではないのかという恐怖。

宮沢りえさんの演じる小古呂の妻、すごくエロくて、それも清潔な感じのエロスではなくて生活に密着したエロさがありました。りえちゃん、いい女優さんだよなあ。成志さん実に20年ぶりの野田演出でしたが、きっちり仕事を果たしていたなあという印象。続投のお二人はもちろん盤石ですが、しかしこれはやはり野田秀樹の身体性をこれでもかと堪能できるという点で得難い作品だよなあと思いました。

暗転になる前、紙のセットで覆い隠されそこに飛び交う無数の蜂が、巨大なゴミに群がる蝿のようにも見えて、ぞっとしました。