「六代目中村勘九郎襲名披露九月大歌舞伎 昼の部」

  • 松竹座 1階1列21番
  • 妹背山婦女庭訓 三笠山御殿

初見です。玉三郎さんがお正月にルテ銀でやられていて、プロフェッショナルかなんかでその時の映像が流れていたと記憶しています。いやはやしかしすごい話だね!七之助くんが「お三輪の目線で徹頭徹尾書かれているところがすごい、お三輪は宮中の誰とも話が通じない」と仰っていて、それはすごく的確な視点だなーと思いました。官女側の理とかまったく触れられてないですもんね。
絵に描いたような「イジメ」のあと、花道でお三輪が憤怒の表情に変わるところ、そこまで耐えに耐えているだけに観客も待ってました!だし、ここは役者としても気持ちいいところだろうなと。さっきまでしくしく、めそめそか細い声で泣いていたお三輪が地の底から響くような呪詛の声を撒き散らす、七之助くんみごとだったなー。あそこが個人的にもこの演目のピークという感じでした。

  • 俄獅子・団子売

扇雀さんと橋之助さんによる俄獅子と中村屋ご兄弟による団子売。おふたりの団子売久しぶりだなー。しかし、こうして見ると、やはり勘九郎さんの踊りのうまさに感じ入る。私は素人なのでなにが、とは言えないですけど、でもあの足の運びや手の表情の豊かさはホントにひきこまれるしずーっと見ていたいなと思わせてくれます。

タイトルだけは知っていた、母子もの、と言って真っ先に名前の挙がる作品じゃないでしょうかコレ。しかし、しかしですよ、こういう話だったんですか!えええ!ちょっとした衝撃ですらあった。私の予想では「母をたずねて三千里」じゃないけど、艱難辛苦やさまざまな誤解とすれ違いのうえで「おっかさん…!」ってひしと抱き合うふたり、みたいなのだと思い込んでいたのだよ!そこで安易にハッピーエンドに流れ着かないところに昔のひとが涙をしぼったというのなら、思わず私もその時代に生まれたかった!と思ってしまいますが、いやはやそれにしても。

昔は「ケッ、こんなベッタベタな展開で誰が泣くかい」とか思っていた私ですが、忠太郎がおむらに手をとってもらっているうちに、じっ…と顔を見上げてしまうところと、おはまと対面して「金をせびりにきたんじゃない、そんなんじゃない」と泣き崩れる忠太郎を見ながらおはまが思わず立ち上がり声をかけるのをぐっとこらえるシーンでカンタンに泣きました。そんなもんだよ。俺も歳だよ。

きりっとした渡世姿の勘九郎さん、実に男前で、こういうきりっとした感じもお似合いなのよねえってこれはあれですか、お医者様でも草津の湯でもというやつですか。いやだってオットコマエなんだもん!もんもん!