「ファンファーレ」

  • シアタートラム 全席自由
  • 脚本・演出 柴幸男

確か最初は「魔笛」を題材に…というような話だったと記憶していますが、いつのまにかそれはどこかに消えてしまっておりましたね。

遠征三本目、「ボクの四谷怪談」の感想で書いたとおりもっとも音楽の比重が高くなった1本です。ファとレの音しか歌えない女の子が自分の出生を探る旅に出る、という柱のようなものはありますが、それをとりまく世界はどこかおとぎ話の世界のよう。

ファとレの音しか歌えない、ファーレという女の子。そして自分を探す(産みの親を捜すというのは自分が何者かを知るというのと同義ではないかと思います)、という柱を考えると、それはおまえが物語厨だからだヨ!と言われそうですけど、ファーレは世界に、つまり他の音と出会っていくと考えてしまうのが心情というやつではないでしょうか。だって、音階って世界でしょう。完全な世界から欠けているものがある、それを見つけるのだとすれば、すくなくともそのドアをノックするぐらいのことは起こるのではないかと思って見ていたのですが、そのあたりの物語のダイナミズムが感じられなかったのが個人的にはうーむ、と思ってしまった点でした。

歌の心地よさを味わう場面もありましたが、おとぎ話のような世界を楽しむには世界観がいまいち伝わってこず、ちょっと乗り切れずに最後まで観てしまったなあという印象です。あと、15分の休憩時間はほんとうに必要だったのだろうか…?休憩なしで1時間55分の上演時間のほうがこの作品にもしっくりきたのではないかなあ。

ホセ・カレーラスから名前を取ったのかと思わせるカレーライス氏と、ファーレをオーディションに間に合わせようとする岡っ引きみたいな彼(すいません役名失念)がよかったかなー。ああいう役者さんがやっぱり好きなんですね、わたし(笑)