「4 four」

世田谷パブリックシアターでは、昨年?劇作家が自由な発想を自在に試す場?として「劇作家の作業場」という劇作ワークショップを始めました。その「劇作家の作業場」から舞台作品を立ち上げる第一弾となるのが本作です。
脚本を手掛けるのは川村毅。?モノローグの可能性を探る?というテーマのもとで執筆を開始し、昨年11月にはシアタートラムでリーディング公演として上演。俳優の発語、観客の反応から川村は物語をふくらまし、それを踏まえてさらにブラッシュアップし、今回の公演へ至るという、劇作家にとって非常に豊かな創作作業を経て生まれた戯曲です。(公式サイトより)

高橋一生池田鉄洋田山涼成須賀貴匡、そして野間口徹というなんとも魅力的な顔合わせに加えてこの劇場主導の腰を据えた芝居造り。堪能しました!チケットに座席が指定されておらず、受付で自分の持っている整理番号とは違う番号札を渡され、フラットになったトラムのスペースに割り振られている自分の番号の場所に箱馬をふたつ組み合わせて座る。箱馬はどう組み合わせても自由。渡された番号札には未決囚、法務大臣、刑務官、裁判員と書かれており、どれかひとつが赤い丸で囲われている。
以下ちょっとネタバレかもしれないので畳みます。

「モノローグの可能性を探る」との言葉通り、基本的に役者のモノローグで構成されています。彼らの語る周辺の情報が、あるひとつの事実に近づき、また遠ざかりしながら、ひとつの出来事を浮かび上がらせていく。彼らはくじによって役割をふられ、その役割に沿って心情を語る。時折、その役割から逸脱する者もあり、役割の交換があり、あちこちにぶつかりながら最後のモノローグにたどり着く、しかし…。

犯罪被害者の遺族たちのロールプレイ、というのがもっとも順当な見え方のように思えますが、しかしそんな風に限定して見る必要を感じないくらい、それぞれのモノローグと偶さか起こる役割同士の衝突、ダイアローグが魅力的でぐいぐい引っ張られて観ることができました。役者が客席を縦横無尽に行き交うので緊張感もものすごくある。開演を待っているときに気がついたんですが、中央が「0000」になっていてその中央の四角いゾーンのほど近くに0001からおそらくは0004までの番号が割り振られていたのではないでしょうか。つまり彼ら5人と、今4桁の番号の示す場所で箱馬に座っている私たちは同じ立場だということなのだ。

人が人を裁く、ということについて何を提示するというわけではなく、考えろ、考えろ、と言葉ではなく語りかけられているような気がしたなあ。

ノローグというのは実はものすごく役者の力量が出るものではないかと私は思っていて、対話とはまた違う演劇腕力を要求される気がするのですが、5人ともそこはさすがに見せますよね。みんな声がいいというのも素晴らしいよ…!中でも「聞かせる」という点では池田鉄洋さんのうまさに舌を巻きました。阿佐スパの「アンチクロック〜」でも相当独特なモノローグを見事にものしていたけれど、なんなんだろうあれ。なんかもうずっと聞いていたかったわ。私の真横を通り抜けざまにイケテツさんが「あぁ?」ってドスの効いた返事をした瞬間があって、ほんとその場でイケテツさんの足元にすがりたい衝動を必死にこらえたよね私…(変態行為イクナイ)。

一生くん、優しい笑顔もいいけれど「温室」や今回のようなちょっと世をすねたような表情を連発されるとまじツボすぎて顔のニヤけが止まりませんでした。私の後ろ(あたり)にいた野間口さんに向かって「まったくもう」みたいな呆れ顔してみせるところとかちょうどがっつり視線いただきましたああ!みたいなことになってほんともう…ヨダレが出なかったのが不思議なくらい…

観ている内に「観劇」と同時に「体験」しているような気になってくる、この舞台造りをされた白井さんの演出力にも拍手。今年トラムで観た長塚さんの「南部高速道路」もそうだったけどトラムはもっともっと面白い使い方出来そうな場所だよなーと改めて。