「生きちゃってどうすんだ」大人計画

松尾スズキさんひとり芝居。私は大人計画の初期を拝見していないのでスズナリで松尾さんを見られる!というのもひとつの確かな喜びでした。

完全な1本の話にするのか、それともオムニバス的なものなのかどっちかなーと思ってたんですが、そのふたつをミックスさせたような構成でした。話としてはひとりの人物をずっと追っている、だけど語られるのはその周囲の人間の言葉で、それによって一人の人物を掘り出していくという。

「角田」という名前から2012年の12月現在想起する人物はおそらくひとりなわけですが、それも含めて話のキモとなるところが時節と(時節よりももっと短いタームだけど)マッチングしすぎていて、ラストはちょっと震えましたね。あの角が生えてくるという奇病、もちろん実際にはないわけですが、自分の角が自分に刺さって死ぬ動物の話は確かアメトークでココリコの田中さんがしていたような気がする。

松尾さんが扮した人物は性転換した歌手、ゲイの大学教授、ゾンビ俳優、生活保護を受けるボランティア相談員と言ってみればマイノリティに属する人間ばかりですが、それぞれのおかしさと哀しさを絶妙にブレンドしてくるところがさすがです。ゾンビ俳優は松尾さんが無類のゾンビ好きということもあってなんともゾンビ愛に満ちたエピソードでした。あとアドリエンヌの「ランク下げます」で歌われたビジネスホテルあるあるに首がとれるほど頷きまくったよね…(笑)

しかし、ホントに松尾さんの奮闘ぶりがすさまじいし、こういう松尾さんを、松尾さんだけを見ていられることが嬉しかったです。やっぱり劇団の公演では役者としては一歩引いたところで出られることが殆どなので。生きちまえ、が呪いの言葉になる世の中だけど、それでもアンケートに思わず、長生きしちゃって下さい、松尾さん、と書かずにいられなった私でした。