最高の離婚、最高。

はー。終わっちまいました。もうここのところずっと毎週木曜日を楽しみに一週間を乗り切っていたし木曜日の22時には基本的にすべての用事をすませてテレビの前に座っていられるようにしていた。恋愛ドラマが苦手といいながらなぜ!いやなぜもなにもない。面白かったからです。それに尽きる。

毎回毎回パンチのある台詞が繰り出されるとかピンポン球のように跳ねるダイアローグの応酬で見せたかと思いきや猛烈な長台詞で押しまくられたりだとか、毎週毎週書き起こしたくなっちゃう箇所がたくさんあって、やっぱドラマは脚本、だよなー、などと当たり前のことを思ったりなんだり。

それで毎週見ながら、このドラマ見ていて「あっヤダ」と思うところがないんだなあ、それってなんなのかなあ、って思ってたんですけど、多分、「誤解」で物語を進めていくところがないのが私が好きなところなんじゃないかとおもった。

あれは2話だっけ3話だっけ、諒の浮気相手の女の子が家に向かって石を投げて、その場にちょうど居合わせた光生は彼女のあとを追っかけるんだけど、その前後のシュチュエーションからいくと灯里には「光生が投げた」と思われるだろうという状況なんですよね。実際、橋の上で佇む光生に灯里は石を返しますし。でも、「こんなもの投げるなんて!」「おれじゃない!」的なやりとりはない。灯里は「言い過ぎた」といい、光生は「ふつうのことがうまくできない」と返す。

その他にも、濱崎さんちに淳之介くんが泊まっているところにおばあちゃんがやってきちゃって、しかも結夏はシャワーを浴びている、もう誤解の総本山!みたいな場面でも、相手は頭ごなしに決めつけないし、弁明の機会をちゃんと与える。友人の子供を公園に連れていって、目を離した隙に子供がブランコから落ちてしまう、その時点で私の脳裏に浮かんだのは友人に頭ごなしに責められる結夏の姿で、あーーそうなったらヤダな…と一瞬思う、でもこのドラマではそうはならない。友人は結夏の弁明をちゃんと聞いてくれる。

つまりそんな、表面的な誤解とかすれ違いとかじゃなくて、弁明を聞いても、わかろうとしても、理解しようとつとめても、わからないことやできないことがある。だってみんな、他人だから。
だから、そこからどうするか。
それをずっとぐるぐると、彼ら彼女らと探すようなドラマだったんだなあ。
4人の中の誰も私には似ていないが、同時に4人の中にちょっとづつ自分がいるような気もします。そんな気持ちで、いつも見ていました。

最終回の、電車を待つシーンで、ふたりともが「このまま終わるのかな」と思い、同時にこのまま終わりにしたくない、と思ってもいる。台詞はないが、お土産と手袋と鍵がふたりの言葉を代わりに物語る。あそこで、光生が勇気を出したとき、えらい、おまえ、えらい、とちょっと泣いてしまった。家までの長い道程を歩くふたりに被さる「ふたりの」回想シーン。ふたりには回想だけど、視聴者には初めて見る場面で、この演出にもしてやられた。区役所で婚姻届を出すときにふたりが名前をいって、受付のひとに「おめでとうございます」と言われる。泣けたなあ。「きみたちもあの瞬間は何かを信じていたはずだろ」って、私の好きなあるドラマの台詞を思い出して、また泣けた。

それにしても、毎回役者泣かせの強烈な長台詞があるドラマだったなあ、ほんとうにおつかれさまでした、と拍手を贈りたくなります。灯里が東北弁で自分の思いの丈をぶつけてしまうシーン、諒の叶わなかったかつての恋、結夏の出せなかった長い手紙なんかがやはり鮮烈ですが、個人的にこの独特な、会話の中でのモノローグもかくやといわんばかりの長台詞を毎回見事に成立させていた瑛太くんの底力には舌を巻く思いでした。第9回の4人のまあ、修羅場といえば修羅場での、「キャンプ行けなくてごめんなさい」に繋がる台詞もすごく好きなのだが(これだけで延々語れるぐらい好き)、先週の結夏との電話からひとり淡々と語るシーンはやっぱり白眉でした。淡々とこなす日常の中の孤独、トイレの中でうずくまってしまう(でも誰も声をかけてはくれない)孤独、孤独は悪いものではないけれど、あれは心が痩せる孤独だ。だからそれに続くそこにいない彼女への淡々とした日常の語りかけにどうにもしてやられてしまうのだ。

思えばドラマが始まった時婚姻届を出していなかった夫婦は婚姻届を出し、婚姻届を出していた夫婦は二度目の婚姻届をまだ出していない、二組の立場はある意味逆転したのだな。いや逆転ではないのか。回転していってるだけなのか。

主要キャストの4人だけではなく窪田くんや八千草さんもほんとによかったし、マチルダとはっさくには癒されたし(わかっていても帰ってきてよかったよおおお)、そしてなんといっても毎回のエンディングのお楽しみ!(最終回でもし不満があるとすれば最後にダンス総集編が見たかったってことぐらいです)隅から隅まで楽しませてもらったなあ、と思います。たのしかったなー、たのしかった!ありがとうございました!