「西瓜割の棒、あなたたちの春に、桜の下ではじめる準備を」シティボーイズミックスPRESENTS

  • アートピアホール 17列32番
  • 作・演出 宮沢章夫

宮沢さんが、たしかツイッターでだったかしら、シティボーイズとやるよ、的なことを仰られたときに反射的に「観たい!」と反応したのは自分がラジカルに間に合わなかった世代だからというのもあるのでしょうか。会社勤めにはたいへんきつい4月の平日公演、ですがいろんなものをなぎ倒して駆けつけました。名古屋にきてくださって本当にうれしい!

黒いスーツで黒いキャリーバッグを引きながら歩く5人の男。「時間がない」「門が閉じてしまう」。なんというスタイリッシュなオープニングなのか!もうめちゃくちゃカッコいい。急ごう、時間がないといいながら先に進まない彼らの姿はどことなくウラジミールとエストラゴンぽくもあるよね。

ラストのシークエンスにも繋がる「門が閉じる」というキーワード、門がなにを指すのかはもちろん語られない(そんな野暮なことはしない)わけですが、私が個人的に想起したのは20キロの避難区域のことでした。門は閉じているか?いや、まだ開いてる。俺たちは果たして出て行こうとしているのか、それとも、中に入ろうとしているのか。

客入れのときにヘドウィグのTear Me Downがかかっていたのも関係あるのかなあ。壁で囲まれた場所みたいな。

舞台セットは至極シンプルで、背面に白いカーテンと鉄骨をイメージしたような枠組み。ここに写し出される映像も効果的だったなー。世田パブのサイズで作ってあると思うので、高さ的にはアートピアのほうが小さいんじゃないかと思うんですけど、そういう違和感まったくなかったですね。そうそう、あらゆる小ネタをちゃんと「ご当地」にしているのもすごいとおもった!あの不動産を探す男の地名とか、結構マニアックなところを突いていた気がします。

終始「不謹慎」と「笑い」のぎりぎりの綱渡りを作者を始め舞台にいる全員が楽しんでいる節があって、これを笑っちゃう私って、でもおかしい、そういうバランスを感じながら観ているこちらも楽しみました。中村有志さんの舞台上での「休憩時間」に始める大竹さんといとうせいこうさんのコント、まさかここで熱海パロが拝めるとはだよ…!犯人はちゃんと「大山」だし、まことさんが木村伝兵衛だし、座席でひとり文字通り身悶えしました。戌井さんがはっちゃけすぎてまことさんにダメ出しをされていた(笑)せいこうさんのポアンカレ予想のところ、言ってることはわかんないんだけど聞いててものすごく気持ちがいいのでもうずっと喋っててほしい!とか思ったり。

カーテンコールのときのトークで、せいこうさんの「想像ラジオ」が三島賞候補になった、との報告があり、芥川賞候補経験者の戌井さん、三島賞芥川賞候補経験者の宮沢さん、同じく三島賞候補経験者のせいこうさんが舞台上に並ぶという豪華さ、それを「みんな落ちちゃったんだね」とあっさり片付けるきたろうさんという素晴らしい絵面が拝めました(笑)大竹さんはパンフの宣伝で「そんな候補になった人たちが文章を寄せてくれています」とあくまでも候補推しの姿勢を崩さず、最後の最後までたいへん楽しかったです!