「八月納涼歌舞伎 第三部」

◆「狐狸狐狸ばなし」
自分が勘三郎さん(当時は勘九郎さん)のこの演目を観たのいつだっけ…と自分のブログを検索したら(ハイハイ自家発電自家発電)2004年10月の松竹座だった。夜の部が夏祭のニューヨーク凱旋だったのよなあ。初日と千秋楽行ったなあ。野田さんお見かけしたなあ。とか、そっちの扉今開けちゃダメ。

勘三郎さんの伊之助の楽しさ面白さ、あの愛嬌あふれる佇まいは自分の中にもまだ残っているんですけど、扇雀さんの伊之助も期待以上によくってすばらしかったなー!上方の女方あがり、で言ってみれば扇雀さんピッタリの役ですもんね。あのフグの毒でのたうちまわるところとかはそりゃもう勘三郎さんは得意中の得意、という楽しさだったけれど、扇雀さんのは笑いながらも若干狂気が感じられるあたり大好きです。あと幽霊になって帰ってきたあとのおきわとの対話ね!「こんな顔」のとこ爆笑しながら「こええええ!」って声に出そうになりましたもの、わたし。あの振り切った感じ好きだなあ。

七之助くんのおきわ、たいへんにきれいでかわいらしくて、婀娜なおんなというよりは純情がまだ感じられるところがありますよね。個人的にはもっと「ズブズブの恋愛」してきた感があってもいいなーと思うところ。勘九郎さんの又市、前半のあほの子っぷりはもちろんかわいいし、後半きりりとかっこいいのも美味しく頂いてはいるんですが、んーーーもう一声!と言いたい私もいるのだった。というのも、私この演目を初めて見たのがトムプロジェクトでケラさんが演出したやつで、そのとき又市をやっていた六角精児さんが今のところ私の「又市最高到達点」なんですよね。って、現代劇を引き合いに出すなと言われてしまいそうですが。

橋之助さんの重善、亀蔵さんのおそめはさすがの安定感。ああ、亀蔵さん…好き…(告白)

わははわははと笑いながら気軽に観られて、納涼に相応しい幽霊もので、芸達者が揃っていて…と、どーんと楽しんでこいよお!と太鼓判を押したくなる1本です。

◆「棒しばり」
三津五郎さんという名手と勘九郎さんががっぷり組んでの舞踊、すんげえ楽しみにしていました。そして観ている間中幸せだった…。いや、わたし自分が舞踊をやっていたわけでもないですし、うまいとかへたとかを寸評できる知識もなにもございませんが、勘九郎さんの踊りは観ていて気持ちがよいのですよ。で、三津五郎さんに至ってはさらに気持ちいい…ああもうずーっと踊ってもらっててかまわない…とかいう気持ちにもなろうってもんです。腕をキメられてるのにまったく不自由さを思わせない。太郎冠者がひっくりかえって足で拍手するんですけど、そんときの勘九郎さんのかわいらしさっつーか、あほな感じっつーか、つーか次郎冠者も太郎冠者もどっちもあほの子だ!そんで帰ってきて怒ろうとするのに思わず一緒におどっちゃう大名もあほの子だ!みんな大好きだ!
紛う事なき名手の踊りと、その名手の胸を借りて踊る勘九郎さんに勝手に胸熱になりつつも堪能した一幕でした!