「蒼の乱」新感線

題材になっているのは承平天慶の乱、即ち平将門藤原純友が関東、西海でそれぞれ同時期に起こした反乱で、そこに外つ国から流れてきた女たちの物語が絡んでいく、ざっくりしたイントロダクションとしてはこんな感じでしょうか。

3時間50分、うーむ、もうちょっと、スリムに、ならないですかね…?というところもありつつ、まあ新感線ならではの、隙間にもぎゅうぎゅう埋め込むよ!的な精神はもちろんあるのでずっと楽しいし飽きさせないです。しかしもう一発、こちらの心に火を点けるところにはあと一歩食い足りないっつーのか、なんか最近新感線観てそういう感覚になること多いんですよね。もちろん楽しいし、満足するんだけど、ボウボウメラメラに燃え盛れずにちょっと消化不良な感じが残るというか。

以下具体的な話の展開に触れますので畳みます。
小次郎(将門)が常世王に不審を抱く、蒼真の前から姿を消す、「奥の大殿」に会って真実を知る…という流れに説得力を持たせるために、序盤は常世王側に「こいつらもう一枚底になんかあるぞ」感をがんがん匂わせているけれど、実際にフタを開けてみればそれは「匂わせただけでした」となる(真の策士は都の中心にいる)わけで、そうすると将門と純友、将門と常世王、蒼真と将門、それぞれが相対峙するシーンでの「業と業のぶつかり合い」感がどうしても薄く感じられてしまったんだよなあ。将門(盗太)、純粋だけど、まんまとその純粋さを弄ばれてるやん、という。まあ将門という名前から「たわらのとうた」を名乗る時点で、この先の展開読めた、というふうにはどうしてもなってしまうわけで、将門がもう一度将門に戻る場面こそをもっと劇的に見せて欲しかった感は否めない。

それよりも、と言ったらなんだけど、将門の乱に蝦夷をぶっ込んできたことに、そして「アラハバキ」の単語に一瞬腰が浮くほど色めき立ちました(そんなにか)。アテルイの封印が解かれる時は近いのか!?私、うがちすぎ!?

とはいえ、ラストシーンのNODAMAPもかくや、な布使いと、そこでどかーーんとセンターに立って空間を埋めてみせる天海ねえさんの「私こそがセンターに立つ人間だオーラ」に何の脈略もなく胸に込みあげてくるものがあったりするから舞台ってやつはこわいよ。ほんとこういう謎の逆転ホームランみたいなものがあったりするのが芝居のこわさだよねえ。

「都にも人物あり」と思わせる役を梶原善さんが一身に担っていて、その説得力には舌を巻きました。うっまいなあホント。これ善さんに説得力がなかったら小次郎がただの馬鹿に見えかねないもんね…鹿もひっくるめて…(笑)あと、これみんな言ってて私が今更言うのもどうかと思うけど、太一くんの台詞術が格段に向上してて文字通り目を瞠りました。すげえ!伸び盛りってこういうことなのか!もともとアクションの方はもうお墨付きをいただいてたわけで、これで喋ってよし、みたいなことになったらこれからが楽しみすぎるじゃないかよオイ。

粟根さんが純友の役だったので、いっぱい出るし、いっぱい立ち回るので嬉しかったですね…最後にちらっと自分の欲望の深さみたいなものを覗かせるのもよかったです。あと、個人的に今回いちばんもったいない!って思ったのは聖子さん。もー、ずーっと「このままなわけないよね、どっかで確変くるよね」って最後の最後まで思ってましたよ私!確変しないならせめて最後壮絶な死に様ちょうだい!じゅんさんのワンアンドオンリーぶり素晴らしいですし、YOUこそまさに世界にひとつだけの花だぜ(文字通り特別なオンリーワン)って感じですが、うーんうーん、じゅんさん大好きな私としてはもっとかっこいいところをたくさん見たい欲もあるんですうううう!!!

松山ケンイチさんを見るとまだちょっと「きよたん…」と思ってしまう病気のわたしですが、前半の純朴突っ走りキャラがすっごくかわいくて、あの人なつっこさ全開な感じはきゅんきゅんきたなあ。「アナと雪の女王」に出てくるクリストフじゃないけど「馬に対する愛情は異常!」ってところがよかった。あと、これで舞台2本目というのになかなかに殺陣もこなしていて、良い動きしてたなーと思う。あの太一くんと渡り合うシーンあってもちゃんと見られるものなあ。天海さん、もちろんキレイだし確変してからの男前っぷりは水を得た魚だし、前述のラストシーンで見せる芝居の大きさとかさすがの一語なんですが、加えてあのカーテンコールの最後、最後の最後にひとり残って一礼するアレ、アレすごい。もう、絵に描いたようなため息とざわめきが会場を走ったよね。お辞儀ひとつであの支配力。おそろしい子!