「君となら」

開演前のSEがずっと1990年のヒット曲だったので、初演て1990年だったっけ…と思ってたけど違いました、1995年でした。それでももうほぼ20年前かい!初演は見ましたが2年後の再演は拝見せず。さすがほぼふた昔前、内容を殆ど覚えていなかったので新鮮に見ることができたよ…!

内容を殆ど覚えてない、というかこの頃の三谷さんはどこか「面白いだけの芝居」と言われることに対して「それこそが目指すところだ」と向かっているところがあったと思うんだけど、「君となら」はまさに三谷さんのそういう姿勢がつまった作品だよなーと思います。

「その場をやり過ごそうとする嘘」が勘違いとすれ違いをよんで坂道を転がる雪のように止められなくなっていく、これも三谷さんのお得意の手法ですが、さすがに若かりし頃に書かれただけあるというか、今だったらもうちょっと手綱を緩めるだろうというようなところでも容赦なく誤解のタネを植え続けててすごいなと思いました。あゆみのあまりといえばあまりの「その場逃れ」さに、終盤はもう観客から「えええ!」「んもう!」みたいなリアクションがでてたもんね。だからこそ、最後のケニーの語りが効いてくるわけですが。

しかしよくウケてた!ポケベルをはじめとして時代設定を現在に持ってこず、20年前のままでやりきっていて、ヘタするとまったくはまらない(中途半端に古い、というのが実のところもっとも古く感じられたりするじゃないですか)可能性もあったと思うのに、それをものともしない強度があるんだなーと。そもそも携帯電話があったらこの話は成立しないところがありますよね(笑)

個人的には、三谷組初参加のハセが非常にいい仕事をしていて楽しかったです。観客に「こいつよりお父さんのほうがいいよね」と思わせなきゃいけないわけで、それもきっちり果たしつつ嘘と誤解に振り回される人物を絶妙な濃いブレンドでみせてくれてました。草刈正雄さんはどこからどう見てもかっこいいハズなのに、日曜日のだらしないお父さん感と娘に振り回されるパパ感もちゃんとあるものなあ。あの台詞のところでは文字通り大爆笑でした。