- 本多劇場 H列24番
- 作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
当初ケラさんが「2時間超えないぐらい」とかツイートしてたのでびっくりしたんですけど、最終的には2時間20分ちょい、まあまあ普通、だけどナイロンにしちゃたしかにコンパクトだ。しかも劇団主要メンバーがここまで顔をそろえてこのコンパクトさというのはすごい。
だんだんゆがんでいく。セットも、観ているほうの感覚も。最初の屋上のシーンで、みのすけさんが犬猫殺しの犯人のエピソードを語る時に「ホロッとくるか!?そんなんで!ホロッときちゃだめだろ!」と言い、実際見ている私もそうだそうだ…などと思っているのだけど、しかしフタを開けてみれば彼らは皆、老人が爪の先に火を灯すような思いで貯めた金を口先三寸でだまし取ることを生業としているのだった。だめだろ、ホロッときちゃ。なのにその彼らの身勝手さ、悪辣さを棚にあげて、ホロッときそうになる自分が確実にいた。
夜の住人たち、とでも名付けたくなるような、不思議な平行世界が、しかしまったくファンタジックさのない佇まいで存在するのが面白かったなー。なんでもないようなやりとりに見えるけど、絶妙にすれ違ってたり斜め上に飛んでたりする会話をこともなげに立ち上げてみせる劇団員たちのすばらしさよ!あの屋上から眼下の人物に話しかけるくだり、めちゃくちゃ笑いました。
しかし、あのあくどい会社における大倉くんと三宅さんのコンビ、なんだかいろんなものに噛みつきまくってるのに三宅さんには従順、とかきゃーこのコンビ好きすぎる!!と物語の展開とはそれほど関係のないところでもにやにやしました。「入社したころはかわいかった」って台詞で、大倉くんのナイロンオーディションのことを思い出してニヤニヤしたのは俺だけでいい*1。
ナイロンを観に行く時は「誰を」って感じじゃなくて、「ナイロンを」観に行くっていう意識がまずあるんだけど、幕が開いてみるとわあ、この人もいる!この人も!みたいな、俺的オールスターキャスト揃い踏み!みたいな感覚になれてすごいお得感ある。今度再演する「消失」も好きで好きで大好きすぎるんですが、こうして劇団員たちがこともなげに揃っている舞台もまた見たい。いつまでも見たいです。
*1:このエピソード好きすぎて自分でもどうかと思う