「皆既食」

ディカプリオとデヴィッド・シューリスの映画版「太陽と月に背いて」は映画館に見に行って、それこそキラッキラ輝いていたレオ様を堪能したものですが、なんとそれが舞台に、しかも心に乙女を飼っている御大が演出!ってことで足を運んできました。

まあ、ほぼ岡田将生くん演じるランボーと、生瀬さん演じるヴェルレーヌの二人が出ずっぱりなんですけど、いやー
ヴェルレーヌってこんなにクソメンでしたっけ…?
と見ながらじっと手を見るほどにクソメンでした。っていうかやってる生瀬さんがまたうまいから余計クソメン度が爆発していくっていう。自分で言うのもなんですけど、物語の中限定という但し書きつきで私わりとクソメン認定が甘いほうだと思ってたのに、その私の地雷を踏む、いやもう踏むどころじゃない踏み抜いてた。まず妊婦への暴力でしょ、あっちもほしいしこっちもほしいっていう煮え切らない態度でしょ、そしてトドメが宗教的勧誘(しかも中途半端)。それ!ぜったい!やったらあかんやつや!(私には!)最後のくだりで「トリプルコンボだな!」って思わずひとりごちましたもの。

確かにランボーは「人並みの幸福」とやらを手に入れていたヴェルレーヌの前に現れて彼の生活をかき乱していくうえに、生活費その他は負担してないような口ぶりなのでまあ、ヒモですよ。だから映画を見た時は「もうヴェルレーヌを解放してやって」というような感想は持ったような気がするんですが、今回はとにかく「YOUはさっさとヨメのところでもどこでも帰ってランボーを解放してやらんかい!」的な感情の方が強かったっていうね!

ランボーに「奥さんやぼくに暴力をふるったときのあんたはみっともない、なにがみっともないって途端に女々しく許しを請うところがだ」みたいなこと言われるんですけど、ほんまそう!!って思うし、妻(の身体)は手放すには惜しいけどランボーとの共犯のような関係は捨てられないっていうお前の煮え切らなさなんなんや!と思いましたし、ランボーに一緒にパリに帰ったら妻の手前まずいから君はブリュッセルに残って…とか言い出すとこちょっとヴェルレーヌそこ座れみたいな気持ちになりましたもの。

とはいえ、ドイツでの別れのあと、年老いヴェルレーヌが酒場でランボーの消息を聞くシーンは哀切としかいいようのないものがあってすばらしかったですし、何よりあの最後の、「手のひらを上にむけて」のあのシーンはさすが御大!これ!これだよ!的な抑えに抑えた萌えが凝縮していて唸らされました。あの去り際の生瀬さんね!こにくらしいほどうまいよ!

遠目でみてもはっきりとわかる岡田くんの、白皙の美青年という言葉そのまんまの顔立ち、佇まい、容姿だけである種の説得力を持たすってすごい。そして全キャスト中、彼がいちばん台詞がちゃんと入っていた(笑)声も良く、滑舌も明瞭で、すでに「達者だなあ」って雰囲気すらあったね。もっとはちゃめちゃでもいいんだよと思うところもあるけど、初舞台とは思えぬ落ち着きぶりでした。