「残酷歌劇 ライチ☆光クラブ」

  • AiiA 2.5 Theater Tokyo 5列17番
  • 脚本 丸尾丸一郎 演出 河原雅彦

感想を書く前に原作者の名前をちゃんと確認しなきゃ…と思ってwiki見たらこれ、そもそもの原作の原作は東京グランギニョルの舞台なんですね!知らなかった。もちろんグランギニョルの舞台は見ていません。ちょうど芝居を見始めたのが上演の2年〜3年後ぐらいなので、古い演劇ぶっくとかで写真ぐらいは見たことあった、のかなあ。

あまり自分の守備範囲に入ってるジャンルじゃないな、とは思っていたんですが、足を運ぶことにしたのは河原さんが演出されるということ、主演を中村倫也くんがつとめるということ、玉置玲央さんはじめなかなか手堅そうなメンバーがキャストにいるという点でした。

実際観てみて、やっぱり芝居は演出家で選ぶのがいちばん間違いないのかなと。たとえ自分の好みを大きく外れても、自分と演出家との相性が良ければちゃんと観られる。そう、まあ題材からいったらやはり好みではなかったです。グロさというよりも、彼らのあの幼稚さに惹かれる要素がどこにもない(刹那とか頽廃とかほんと自分の範疇ちゃいますわーと思っちゃう)。でもって歌劇、ほんと何回歌劇が苦手だって実感したら気がすむんや!マジで私学習能力ない!

すごいなと思ったのは、全編にキレッキレのダンスとダンサーを配していて、それが世界観の演出にものすごい力を発揮していたところ。肉体の説得力というのは万の台詞に勝るものがある、と最近とみに実感しているのですが、ライチという存在もあの役者の身体のキレで説得力を持たせていたなあと思います。あと、やはり音の使い方がすばらしい。この少年たちの破壊衝動というか、刹那を永遠にしたい欲望というか、その暴走ぶりを最後まで緊張感をもって物語として引っ張っていくうまさはさすが。グロテスクとも思えるシーンもある程度のリアルさは担保しつつ、あくまで記号的にみせてくれているところがありがたいよね。

主役のゼラをやった中村倫也は期待通りの、いや期待以上のすばらしさ。このためにチケット代を払ったと言っても後悔しない。身体のキレもいいし台詞もいい、その幼さに狂気を滲ませる目もいい、言うことないんじゃない?こういう役で説得力をもって舞台上に君臨できるというのはなかなかできるこっちゃないですよ。相対するタミヤという役に真逆の(そして地力のある)玉置さんを配したのもうまいキャスティング。玉置さん自身はどっちを振られてもやれそうだが、今回は少年マンガから出てきたようなストレートな少年像をきっちり体現していてよかった。わりと異種混合というような顔ぶれではあったけれど、そういう面々をまとめるのは河原さん劇団時代から慣れてるもんね…それこそ自家薬籠中のものだよね…

ところで、AiiAシアター今回初体験でした。いろいろすごい悪評というか、伝説を小耳に挟んでいたのでおそるおそるではありましたが、たしかに仮設感がすごい。あとあの椅子、座り心地云々というより、深く腰掛けて微動だにしない、っていう前提の観劇に向いていない作りのような気がする(何席かが連なっており、横の人の振動がダイレクトに伝わるという点も含めて)。立ったり座ったりするには間隔も広いしいいだろうけど。なんつーか、スポーツ観戦用ぽい椅子だったよなあ。