「裸に勾玉」MONO

MONO新作。前回公演は見のがしてしまいましたが、毎回しっかり地方公演日程を組んでくださるおかげでわりと継続して拝見させて頂けています。今回の舞台は弥生時代で、どうやら周囲からは変わり者と敬遠されている不思議な一家のところに、ひとりの男が迷い込んでくるというあらすじ。

まず特筆すべきはこの舞台で使われる「言葉」で、弥生時代に生きる彼らは「彼らの」言葉を喋る。それは今の言葉と似通っているが、微妙に違う。違うが、意味をくみ取れないわけではない。このどことなくほんわかとした彼らの言葉で全編を通して語られる効果は本当に絶大でした。土田さんは集団における人間の「いやらしさ」みたいなものを絶妙に描く方ですが、それが絶妙すぎて時に「つ、つらい…!」ってなることもあるんですけど、これがこの舞台で使われる「弥生言葉」で展開されると幾分味がマイルドになるような。言葉を噛み砕こうと心の中でワンクッションあるからそう感じるのかな。

もちろんそれだけじゃなく、劇作上の効果も絶大で、この「言葉の微妙な違い」を使った展開やギャグの数々が気持ちよいくらいにはまるはまる。「ショックでめちゃへこむ」なんて、なんてことはない台詞ですけど、これが終盤会場を揺らすほど笑いを取るんだからうまいとしか言いようがない。あの「スーツ」って単語の放り込み方とか、ほんと悪魔的な冴えですよね。っていうかわたしもスーツ気になる!気になるよ!!(笑)

異世界タイムスリップものというと、大抵迷い込んだ側の混乱をメインで描くし、そこでカルチャーギャップみたいなものを見せていくのが常套ですけど、飛び込んでこられた方の混乱を中心に据えているのがさすがですよね。飛び込んだ側は、もうその世界に(納得はしてないけど)慣れてはいる。状況の説明をするシーンでも、どうせ通じないという諦めとか、知ったかぶりする男のキャラを浮き彫りにしたりという効果も見せつつ観客への説明を果たしていて、はあ、手練れの脚本ですよねほんと、ってしみじみ思いました。

その「飛び込んで来られた方」が「自分たちと違う」ものをどう受け入れるのか、ってあたりはものすごく現在とコミットしていて、おそらくあの時代には絶対であった占いにNOと言い、人と人を分けてはいけないといい、そういうオトヒコがいたから今の自分たちがあるのではないか、と踏みとどまる兄妹たちにはぐっときますし、うらやましいと思う気持ちが憎さに変わる、人間は自分より弱いと思ったら暴力をふるう、とひとつひとつ差し挟まれる台詞のキレがすごかったです。

あと、マトリメが踊りって何かのためにやるだけじゃない、ただ気持ちを晴れやかにしたいってだけで踊っていいんだ、って言うところすごーくすきでした。芸能ってものの最初を描きたかったのかな、土田さん、なんて思った。

MONOの役者さんたちはいつもながらに見事で、金替さんとかねー、ほんともう、ずるい!(最後の「おまえやっぱりオトヒコに似てるよ」の台詞とかさあ!)って思うし、水沼さん演じるアクタの「なんにもできないから」って最後の台詞切なすぎるし、でもってそのあとマトリメに妻になってやるよって言われたときの浮かれ顔かわいすぎだし、出番はそれほど多くないけど土田さんの存在感すごいし(あの最後の「いいんだって、お前は違うんだからいいんだって」めっちゃこわかった)、女性陣も皆はまっていて高値安定のアンサンブル。見終わったあと、あの弥生言葉を真似したくてしかたなくなっちゃうんだよなー。かたじけなし!