「キンキーブーツ」

  • オリックス劇場 1階14列64番
  • 脚本 ハーヴェイ・ファイアスティン 演出 ジェリー・ミッチェル

来日版と国内版が相前後してかかるよー国内版は三浦春馬くんが出るよーって最初のアナウンスがあって、あのできる子春馬くんなら相当ハマるだろうなーと思いつつ、しかしいやほんと…今年の夏はちょっとスケジュールが!と見送っておりました(今年そんなんばっかりや!)

でもついったのTLに流れてきた稽古場映像で春馬くんがガッチガチのピンヒールで踊りまくる映像見て、さらにそこからどばばばとチケットを押さえにかかった観劇友達(ありがたい…!持つべき者はアンテナが高く決断力のある友)に乗っかって大阪公演のチケットを思わず押さえてしまったのす。

東京の新国立劇場での公演観た方が揃って大激賛していて、うわーやっぱりか、チケット取っておいてよかったなー、春馬くんのローラ楽しみだなーって相当にハードルを上げて臨んだにも関わらず、いやもう出のいっぱつめでそのハードルを越えてくる三浦”ローラ”春馬の魅力!歌唱力という点だけを見れば、本業としている人と較べると食い足りないかなと思うところはあるにせよ、それを補ってあまりあるあのダンスのキレ!!!んもうずっとローラが踊ってるのを観ていたかった。でもって、ドラァグクイーンをやるって時によくありがちな「線の細い女装」じゃなくて、ちゃんとバルクアップされた筋肉に支えられた美!というのこの説得力ですよ!

いやほんと、この何年か芝居を観ていてよく思うことなんですよね、この「肉体の説得力」というやつ…。訓練とか練習とかそういうものがすべてじゃない、かもしれないけど、訓練や練習で培った身体だからこそ見せられるものになるってこと、絶対あるわけで、そこにはひれ伏さざるを得ないし、逆にいえばそれにひれ伏さないでいるだけのアイデアやホンの魅力や演出として描く絵の完成度ってのは絶対必要なんじゃないの…?っていうのを、すごく思ってるんですよね、って話が逸れた。とまれ、春馬くんのローラにはまずその肉体の説得力、というやつがちゃんとあるのだよなあ。だからこそ、あとに乗せていく芝居にも説得力がある。

物語としてはぜんぜん奇をてらっているワケではないし、わりと場面場面をすぱっすぱっと見せて進行していくので、逆にいえばその場面を立ち上げる「歌」や「ダンス」の力がないと平板な印象で終わる可能性もあるんだけど、そうなってないのがすごい。春馬くんのローラだけじゃなくて、ソニンちゃんのローレンもすっごくキュートだったし(「間違いだらけの恋の歴史」最高!)徹平くんはやはり、歌でもって芝居を立ち上げる力をぞんぶんに発揮してたし、靴工場のみんなハマリ役だし、ドン!まさかドンがあんな良い役になるとは〜〜〜!だし、個人的なイチオシのジョージさま目の保養だし、エンジェルスのみんなはとびきり素敵だし…!いやもう全方位でキャスト的に満足すぎました。

一幕ラストのEVERYBODY SAY YEAHの高揚感もすごいけど、やはり圧巻はラスト!わかってるんだよねえ、あれ、ローラが来てくれるって観客はみんなわかってるの(チャーリー、その前のシーンでそうとうひどいこと言ってるけど、それを自分でわかってるからこそあそこで一人ステージに立とうとするんだもんね)。だけど、わかってても、あそこで照明が変わってローラがバーン!と出てきてくれたときのあの、まさに胸熱としか言いようのない心の動きってなんなんだろうね?そこからのRAISE YOU UPでしょ、もうさーローラが髪をなびかせてくるっとターンを決めるのを見るだけで、もうそれだけで泣けてきちゃうあの感じ。

これ、音楽をシンディ・ローパーが書いたというのは知ってたんだけど、脚本があの「トーチソング・トリロジー」のハーヴェイ・ファイアスティンなんですよね。あの映画の名台詞、だから欲しいのは愛と敬意だけ、そのふたつがない人に用はないわ、っていう、まさにローラとチャーリーには愛と敬意があって、だからこそこんなにも胸打たれる結末になるんだなと。

終わった瞬間、まさに沸騰するようなスタンディングオベーションで、私ももちろん矢も楯もたまらず立ち上がったし、ミュージカルがどっちかといえば苦手な私だけど、でもこういう衝き動かされるような感情ってミュージカルならでは、音楽の力ならではだよなって改めて思いました。口コミでどんどん観客が増えていくのもむべなるかなだし、また是非再演してほしいなと思う演目です。ローラ、ほんとに、あなたは最高!