「十二月大歌舞伎 第三部」

◆二人椀久
どこかで観たという気がしてるんですが、お、覚えてない…(きっと夢の国にいたのでしょう…スイマセン)
今回は玉三郎さまと勘九郎さんの組み合わせ!勘九郎さん、放蕩息子の雰囲気はないけど、松山にほれ込むあまりいろんなものに破綻をきたす役がすごく似合いますよね(ひどい)。玉三郎さまの松山が美しいのはもちろんですが、とくにおふたりの連れ舞いになるところがよかった…。勘九郎さんが踊っていると勘九郎さんしか目が行かない病を患っている私ですが、さすがに玉さまとならばれると、あっあっどっちを観たらいいのぉ〜!状態でした。最後のね、松山が消えていくところの椀久がまた切ない、そんでもってこの切ないのが本当に勘九郎さんに似合う!

◆京鹿子娘五人道成寺
スペクタクル!本当にそんな感じでした。最初の道行、七之助さんに勘九郎さんが加わるところから「常ならぬもの」を観ているという感じがすごかったですが、それが最後の鐘入りに至るまで消えない、消えないどころかどんどん濃厚さが増していくという舞台。
玉三郎さん以外はぐっと若い顔ぶれなので、玉さまをシンにそれについていく4人が岡ひろみのようというか、玉さまがお蝶夫人のようというか、玉さまと並んで踊るときの緊張感はもちろん、4人の、これからこの大曲に挑んでいく気合いのようなものも感じられて、ほんと飽きさせない構成でした。観てるこっちもうわあもう目がいくつあっても足りない!の連打でしたね。七之助さんと勘九郎さん、踊りのタイプはこうして並んでみるとやっぱり違うなと思うのに、ふとした瞬間にぴったり寄り添うような動きがあったりして、ご兄弟の血を感じたりして。

しかし、やはりその中にあって、打ちのめされるっつーのか、参りました…!となったのが玉さまの「恋の手習い」。すごかったね。すごかったですねアレ。あの縮緬の手ぬぐいをくわえているところ、あの縮緬の手触りまでもが伝わってくるような、一挙手一投足にあの歌舞伎座の客席が吸い込まれるような、濃密さ。時間を忘れて見入っちゃいましたよ。

次にこの娘道成寺に挑んでいくのは誰なのか、それも気になるところですけれど、玉三郎さまおひとりでこれを踊られることはあるんだろうか、あってほしいという気にもなったり、いやはや、すばらしい観劇納めになりました。