「ギア」

  • 京都ART COMPLEX1928 2階6列15番
  • 演出 オン・キャクヨウ

今の家に引っ越してきたころに京都のART COMPLEXでロングラン公演やっているノンバーバルなパフォーマンスがあるんだよってのはどこかで見ていて(シアターガイドの記事だったかな〜)、折角近くに住んでるんだし評判よさそうだし、あと宣材写真で使われている紙吹雪の写真がなんかすごくツボ…と思いつつ!こんなに時間が経ってしまった。当日券で観てきました。

2012年からのロングラン、さすがに伊達じゃない。素晴らしかったです。まずなによりも度肝を抜かれたのがプロジェクションマッピングを使った演出の見事さ!昨今ありがちなとりあえずプロジェクションマッピングやっときゃいいんでしょなところが全くない、必然性があり、美しさがある。ほんと、ぜひ見てほしい。あの狭いART COMPLEXの空間を生かしに活かしまくってます。

台詞なし、身体表現によるパフォーマンスのみの舞台ですが、舞台設定のようなものは最初に提示されていて、おもちゃの廃工場で今でも作業を続けるロボロイドたち、そこに「ドール」である少女の人形が落ちてくる、というもの。わかりやすくコミカルな動きが多くて楽しく、あっという間に引き込まれます。また舞台装置がスチームパンク感あふれたカッコよさがあって、それが前述のプロジェクションマッピングと見事に融合するんだからほんと見ていて飽きない。

少女との接触によって、ロボロイドたちがしばし解き放たれ、それぞれのパフォーマンスを見せるんですが、ダンサー、パントマイマー、マジシャン、ジャグラーと4人4様のスタイルで、かつ突出したパフォーマンスが次々出てくる!これほんと素晴らしいです。キャストスケジュールを見ると、それぞれのパートに4〜5人ぐらいキャストがいて日替わりになってるんですけど、私が見た回のクオリティを思うにこのレベルでキャストが入れ替わりってマジすげーな!って心の底から思いました。それぞれにパートカラーが決まってるんだけど、ブルーのマジシャンのドヤ顔…MAJIでSUKI…ってなったし、グリーンのジャグラーのコめちゃかわいい!ってなったし、しかもどれもこれもほんとに見ごたえがある。なんだこの層の厚さ!

紙吹雪の圧倒的な物量作戦、ラストシーンの照明の演出の美しさ、最後の最後まで楽しませるパフォーマンス。上演時間は90分で、まさにあっという間のひとときです。

でもって、私が何よりスゴイ、と思うのは、これが「いつでも観られる」芝居であることです!すでにロングラン公演が5年に及ぼとしており、まだクローズの話は一切聞こえてこないので、今これを読んでいるあなたでも!見ようと思えば!見られる!チケットも何か月も先のものが即完するというようなものじゃなく、1か月ぐらい先なら土日の先行チケットが普通に買え、当日券は当日9時(又は10時)からの電話予約なので(私の場合、9時にかけて15分ぐらいで繋がりました。運ももちろんあるでしょうが、そこまで狭き門ではないと思われ)並んで時間を無駄にする必要なし!そして何より、観劇をおすすめすることをためらわせない、内容のクオリティの高さ!

配布された当日パンフのプロデューサーのコメントに「本公演は、小劇場の新しい可能性を探る試みであり、観劇機会と観劇人口のすそ野を広げるための挑戦です」とありましたが、まさに!と膝を打つ思いでした。この作品に出会った観客が「観劇」というものに対して心を開くだけでなく、この作品からどんどんいろんなキャストが育っていくだろうし、それこそが「すそ野を広げる」ことにほかならない。こういう芝居がいろんなところでかかってほしいし、これを成功させているこのプロジェクトには惜しみない拍手を送りたい。文科省が表彰したっていいぐらいだよ!!!

開演前の諸注意がモニタで流れるんだけど、それをやってるのが小林顕作さんで、どういう縁だろ?と思ってたらがっつり演出部に名前ありました。いい仕事するなあ!あと振付に近藤良平さんの名前もあって、ART COMPLEXとコンドルズの縁の深さゆえなのかなと。

劇場の立地も最高なので終演後おいしいご飯を食べるもよし、木屋町通や鴨川沿いで風情を楽しむもよし、アフターもがっつり楽しめます。関西にお住まいのシアターゴアーの皆さんはもとより、何かで関西方面に遠征予定の方にもどうですか!とゴリゴリにおすすめしたくなってしまう舞台でした!