「ザ・空気」二兎社

久しぶりの二兎社。いつも高レベルの芝居を見せてくれるという安心感があるのになぜかタイミングが合わない…というのは言い訳ですね!
タイトルの「ザ・空気」の空気はまさに「空気を読む」の空気。「空気を読む」って言葉、いつからこんなに市民権を得たんでしょうか。市民権どころか、もう抜けないぐらい深く根を張った言葉になってしまった。

しかし劇中で描かれるのは、はたしてこれを「空気を読む」って言葉でくくってしまっていいんだろうか?という実態で、そこがまさに永井愛さんの思うところでもあるんだろうなあ。見ながら、永井愛さんはほんとうに気骨のある作家だなあというのをしみじみ思いました。空気なんか、しんでも、読んでやらん、というような、今この事態、これから向かおうとしている事態に対する怒りがあり、それをごまかさずに板の上に乗せる筆力と気概がある。

取り上げられているのはテレビ局のニュース番組を作る編集部で、私の大好きな「ニュースルーム」をちょっと思い出したり。いやしかし、印象操作というか、元の素材が変わらなくても、何かを入れ替えたり一部を削るだけでまったく違う印象を見る人に与えることができる、その過程をつぶさに描いていて、「本当のこと」なんてそう易々と伝えられるものではないんだなと、ひとつのニュースが換骨奪胎されていくさまを目の当たりにしながら思いました。

個人的には、あそこで彼が飛び降りる、という選択にならざるを得なかったのか?という気がしており、そうではない着地点が見たかった気がします。あるものは心折れ、あるものは剣を置いても、なお、という部分が。

田中哲司さんをはじめ、精錬ばかりの5人の少人数の芝居。濃密なやりとりが隙なく成立していて、見ごたえありました。