「秀山祭九月大歌舞伎 夜の部」

「ひらかな盛衰記 逆櫓」。吉右衛門さんの松右衛門。以前どなたでみたんだっけ、と思って自分のブログを検索したら橋之助さんでした。そうだったー。その時も、権四郎の「そういっても死んだ孫が帰ってくるわけでもない…」って諭す言葉にお筆が乗っかって「そうそう、ここはもう気持ちを整理して…」みたいなことを言い出した時にお前が言うなァ!と思ったんだった。このお主筋の子どもと自分の子どもの命の重さの違い、みたいな芝居は多いですけど、そうした抑圧があったからこそ名作として残ってる芝居が多いんでしょうな〜。権四郎をやった歌六さんが特に素晴らしかったです。

「再桜遇清水」。さいかいざくらみそめのきよみず、と読んで作者の松貫四は吉右衛門丈のこと。いわゆる清玄桜姫ものです。こういう作品を観ると、歌舞伎、自由度たけえ!というか、高僧が美しい姫の色香に迷って破戒するわ、破戒したと思ったら殺生に衆道にやりたい放題だわ(女は桜姫ひとりと決めているから小姓と!ってある漫画*1を思い出してしまいましたよ)、しかも姫の小袖を後生大事になでくりまわすヲタ体質だわでなんかもう…すごかったです。ほんと桜姫にも清玄(きよはる)にも逃げてちょう逃げてとしか思えなかった。でもって清玄(せいげん)を演った染五郎さんが徹頭徹尾楽しそうで、ほんとにイキイキしていた…普通の二枚目やるよりなんかこう…燃えるものがあるんでしょうか。黙っていれば文句なしの美しいお姿だけに堕落ぶりが倍輝く感じがありましたね。奴のお姿もかっこよく、あんな染さまこんな染さまを堪能させていただきました。

*1:エイリアン通り」にそういうキャラが出てくる。「妻を心から愛している。だから浮気は男と!(堂々)「自慢して言うようなことかっ!」