「ちょっと、まってください」ナイロン100℃

ナイロンひさびさ?のがっつり劇団公演。ケラさんが事前に別役的とか不条理とかキーワードをちりばめていてくださってたので、そういう心構えで観られてよかったです。ケラさんの作品大好きなんだけど、たぶん私はより物語性の強い作品に惹かれているところがあって、不条理、と言われると身構える習性が…。その昔、最初に「下北ビートニクス」を見て、おもろい!と思い、次に「ビフテキと暴走」見て、わからん!と思った思い出が影響しているのかもしれない。していないのかもしれない。

ともあれ、かなりの飛距離をぐいぐいとばしまくる脚本でしたが、意外なほどにというか、観客が非常によくウケていたなーという印象です。そしてこの種の作品をナイロンで見ていつも思うのは、キャストの強さというか、強靭さというか、いやーこれホント一歩間違ってどうしようもない演出家と役者の手にかかったら3時間地獄案件になりかねないよねと思いました。それほどナイロンのメンバーの達者さがすごい。みのすけさん、三宅さんという条理の距離が尋常じゃないふたりもすごいけど、個人的にイヌコさんの仕事師ぶりにほれぼれしてしまった。一見地に足が着いているようでありながら誰よりも目が離せないというか。それはそれとして、大倉くんの狂犬病はずるいと思いつつ爆笑してしまいました。

客演陣ももちろんすばらしいが、中でもマギーは一日の長というか、キーマンとなる役どころを絶妙なアイロニーで見せていてよかった。あのペテン師の「夢」の入り込み具合がすごいツボで、もちろん夢オチとは違うんだけど、ポジネガの反転みたいなうっすらとした寒さがある展開で印象的です。あの貧乏一家と金持ち一家の風景も、思えばまるでポジとネガのようで、黒だと思っていたものに何かが映っていて、白だと思っていたものは実は空っぽ…というような。

この作品を観劇された役者さんが口をそろえて、出てみたいけど、絶対たいへんそう、と仰っているのが興味深い。いやでもわかるような気がします。