「FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇」

  • シアタークリエ 4列18番
  • 原作 アリソン・ベクダル 脚本 リサ・クロン 演出 小川絵梨子

2015年のトニー賞受賞作品を小川絵梨子さんがミュージカルを初演出、プレビュー時のシアターゴアーなみなさまの評判がとても熱く、上京のタイミングにむりくりスケジュールをつめこみました。

楽曲がなかなか一筋縄ではいかないというか、難易度の高いナンバーが並んでいるな~という印象。そこを歌いこなすキャストの皆さんもさすがなんですが、個人的に歌のうまさとドラマに酔う!という物語の展開でもないので、歌だけではなかなか高揚しきれないという感じ。大学生アリソンが恋の喜びを爆発させる場面とかはよかったです。

個人的にはこの演目は何といってもあの父親との最後のドライヴの場面が白眉だと感じました。物語を描いてきた(主人公は漫画家なので)アリソンが、ついにその記憶の中の父とのドライヴをふりかえる…あの、電線、電線、の繰り返しと、いま、いま、話さなければとおもうのに言葉の出ない空気、そしてそれが、ついには父とすごす最後の時間となるのだ、ということを知っていてあの時間をふりかえることの重さ。

デルトロ監督の「シェイプ・オブ・ウォーター」を見たのはこの芝居のあとなんですけど、この物語の父にちょっとストリックランドの影を見るような気がします。完全であれ、ということを求め続けられることと、その反動。

ひとりの女性の幼少期と大学時代と現在が行き来する構成で、このあたりの見せ方のうまさはさすが小川絵梨子さんだなという感じでした。シアタークリエにお邪魔したのもひさしぶりな気がしますが、日比谷は今ホットスポットなので(!)今後はこれほど間を空けずにお邪魔したいなと思います。