「セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!」

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アメリカ・キューバ・スペイン合作映画、エルネスト・ダラナス・セラーノ監督。「実話をもとにした架空の物語」で、「最後のソビエト連邦国民」とも言われるセルゲイ・クリカレフをモデルに「あったかもしれない」物語を描いております。

なんで「最後のソビエト連邦国民」なのかというと、宇宙飛行士として宇宙ステーション「ミール」に滞在している間にソ連が崩壊してしまったから。宇宙に行っている間に国がなくなる…ってすごい話だけど、そのソ連崩壊のあおりをうけて地球への帰還の見通しが立たなくなったセルゲイ。かれは無線マニアで、宇宙から発信したその通信をキューバアマチュア無線愛好家である大学教授が受信する、そのふたりの交流を軸に話が進んでいきます。

おもしろいのは、この映画の主軸はキューバに暮らす教授一家にあって、かれらはかつてソ連の同盟国としてそれなりに豊かな暮らしをしていたわけだけれど、社会主義国家への逆風吹き荒れる中、世界からも孤絶し、生活が立ちいかなくなってしまう。マルクス主義を専攻しソ連に留学までしたセルジオも、その職では「どうにも食えない」ところまで追い詰められてしまう。とはいえこの映画に悲壮感が蔓延しているわけではなく、どこまでも「くるしいけれどもやっていかなくちゃ」という前向きのトーンがあって、それが宇宙でただひとり、帰還のあてもなく時を待つセルゲイとの間になんともいえない連帯感を生み出していくところがとてもよかった。

「あったかもしれない」という意味ではおとぎ話のような部分もあって、個人的に自分が映画を見慣れていないな!と思うのはこういうときの処理、処理って言葉が正しいかどうかわかんないけど、自分の中で飲み込む作業が途端にスムーズにいかなくなるところ。これの…意味は?とか考えちゃってダメですね。あと、無線を通じていっとき魂の交流をした彼らは、実際のところそれ以上のドラマチックな展開にはいたらない(ラストにそれを匂わせて終わる)んだけど、ああ~~品がある~~と思うと同時に、でもベタベタのベタにふたりが初めて会うとこも見たかった~ってなるので私の嗜好も相当ベタ好きなんだな…と実感しました。

アメリカにいるアマチュア無線家をロン・パールマンがやっていて、CIA絡みの怪しげな本を書いているって役柄がぴったりすぎました。あとモールス信号じゃない、初めての音声通信のときにセルジオに言うセリフよかった。セルジオのむすめちゃんが超絶かわゆく、大人になった彼女目線でナレーションが入るので、それも映画のトーンを明るくしてくれた一因だったように思います。