「アリー/スター誕生」

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名作「スター誕生」、押しも押されもせぬ大スター、レディ・ガガを主演に迎えて4度目?のリメイクです。監督・製作・脚本・主演ブラッドリー・クーパー!くーぱんちゃんはこれが初監督作品です!

オーソドックスなストーリー展開(まだ誰も知らぬ野の花を育てて大輪のバラにする、みたいなことだ)だし、有名な作品のリメイクなのでもちろん「このあとどうなるか」もわかって見ているんだけど、主演ふたりの牽引力がすごいのでぐいぐい見られます。なにしろ、あの!レディ・ガガを起用しているのだから、こちらは万全の体制で彼女の歌を待ってしまうし、あのバーのステージでのLa Vie en roseの圧倒的カリスマ性、ジャクソンに引っ張り出されて歌う「シャロウ」の爆発力、待ってました―!というカタルシスが存分に味わえてよかった。欲を言えば、彼女がステージを我が物にしていく、おそらく劇中の二人にとってはもっとも幸福なツアーの様子をもうちっと見たかった気もする。というかもっとガガの全力ステージパフォーマンスを観たい欲と言ってもいいかもしれないですねこれは。

ジャクソン・メインという人物に魅力を感じるかどうか、というのはすごく人によって分かれるところなんだろうな~と思います。私はなにしろブラッドリー・クーパーのお顔が大好きだし、わりとダメ男耐性あるほうだと思うんですけど、とはいえ拭いきれない孤独と、聴力を失うかもしれないという恐怖から酒とドラッグにおぼれていく…というところに肩入れできるかというとさすがに落ちるところまで落ちすぎていて難しいところがあった。あと後半に強烈な共感性羞恥を催させる場面があり、いやもうあまりのことにできれば見たくない!とまで思ったので、そういうインパクトを与えるという意味では成功しているな…と思いました。

でも!あのジャクソンとアリーのね、出会いはすごく魅力的に描かれていて、そこにすごく説得力があった。あのバーのシーンよりも、スーパーで冷凍豆で手をぐるぐるにして冷やしてくれるところ、そのあとの駐車場の会話がめっちゃいい。トドメに「もう一度君を見たかった」だもんね。あれは恋に落ちないほうがむりってぐらいですよ。だからアリーが、自分を引き上げてくれた、という理由だけじゃなくて、ジャクソンをどうしても離せないと思うのはわかる、という気がしたなあ。

あと個人的に好きなのはジャクソンとお兄さんのやりとり全般。最後のあれはずるい。おれが崇めていたのは兄貴だよ…。車をバックさせようと振り向く兄の顔がさっきまでと全然違う、あふれる何かをこらえるような顔をしているのがね、すごく印象的でした。

くーぱんちゃんのクズ演技迫真に迫りすぎていて、これは各賞レースでも注目されそうだなと思いましたし、そう、後半どうしてもくーぱんちゃんに話の主軸が映ってしまうので、そういう意味でも後半にもうひとつ、ガガのライヴでの圧巻パフォーマンスが拝めるとよかったなーと(しつこい)。とはいえ、アリーの素朴さが時間が経つにつれてどんどん洗練され、私たちのよく知るあの「レディ・ガガ」の迫力ある美というようなものになっていく姿は見事でした。ジャクソンがスターとなったアリーに語る「歌うこと」についての台詞、とてもよかったです。