「ブラック・クランズマン」

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スパイク・リー監督作品。本年度アカデミー賞脚色賞を受賞。プレゼンターのスパイク・リーの長年の盟友、サミュエル・L・ジャクソンとの抱擁、感動的でしたね。

もともとの原作はこの物語の主人公にもなっているロン・ストールワースご本人が自らの体験をもとに書かれたものなのだそう。1970年代、まだ差別の色濃く残る時代にその地区初めての黒人警官となったロン・ストールワース。警察署内でもまだまだ偏見の残る中、彼はひとつの新聞記事に目をつけ、黒人に対する強い偏見を持ったレイシストを装ってかの悪名高きKKKクー・クラックス・クランに電話をかけ、組織内に潜入捜査を図ろうとする。もちろん、潜入する刑事は白人でなければならない。ひとりの人間をふたりで演じ、そのいびつな組織深くに潜り込んでいく。

70年代の話だよね、今はもう時代が違うよね、と安心しているとビンタされて、返す手でもう一回打たれるみたいなアレ。それでいて、オフビートな刑事もののバディ・ムービーを見ている面白さも存分に味わえるので、感情の振り幅がえらいことになりました。KKKの指導者デビッド・デュークについて、ローブで顔を隠さず、自分の主張はまるで人種差別ではないかのような顔をしてホワイトハウスに乗り込む、そこで憎悪を撒き散らすんだ、と言われたロンが「国民はそんな男を選びませんよ」と答える場面、ぞっとしました。そう言うロンに対して返した「ずいぶんのん気なんだな」というセリフにも。国民はそんな男を選ばない、とおそらく多くの人が思っていたはずなのだ。

KKKが目の仇にしたものは黒人だけではなくユダヤ人もだったんだけど、ロンの代わりにレイシストのふりをしてKKKに潜入するフリップがKKKメンバーのひとりにユダヤ人かどうか執拗に疑念を向けられること、それによって自分のルーツに自覚的になっていくところがよかったし、ロンとの連帯感も絶妙な温度だったな~。

しかし、アダム・ドライバーは魅力的な俳優さんだねえ。SWシリーズとも、ローガン・ラッキーともぜんぜん違うタイプのキャラクターで、ぜんぜんオーバーアクトなふうでもないし、いつものアダム・ドライバーなようで全く違う魅力があるっていう。

任務を無事終えた捜査チームの大団円ぶり(あの悪徳警官の末路!)がすごくいい風景で、ホッとしたところに2017年の映像をぶちかまされて、地続きであること、にうちのめされて劇場を出るパターン。でも今見られてよかったなと思った映画でした。