監督はロブ・レターマン。あのポケモン実写化!しかもライアン・レイノルズがピカチュウを演じる!って第1報が来た時には「要素多すぎてなるほどわからん」ってなったのと、ポケモンGOは地道に楽しんでいるものの、そもそもの(ゲームボーイを起源とする)ポケモンに全く触れずに育ってきちゃった人生なので、それほど食指を動かされてなかったんですけど、アレですよアレ。全米公開直前に出た、すわ全編リークか!と思わせて冒頭除いて1時間42分延々ピカチュウがダンスしてるだけの動画のアレ。げっ!やばい!かわいい!かわいいし、この宣伝考えた人天才では!?違法なものほど人は掘り起こしたがるという心理を突いたし、いったん拡散されるともうみんなが勝手にバンバンRTしてくれるし。クレバーすぎる。
見終わった後の私の最初の感想「私もライムシティで自分だけのポケモンパートナーと暮らしたい…」。いやーこの映画の楽しさって、まあこれは個人的な感想なので的外れかもしれないけど、あの、パシフィック・リムを最初に見た時の、あの感覚とちょっと近い気がするんですよ。巨大ロボットアニメのロマンを完全に再現したあのオープニングのジプシー・デンジャー出撃シーン。物語の中、存在しない二次元の中、と思っていたものが「もしかして触れられるのでは」っていう質量で目の前に現れるあの感じ。いるんじゃないか、もしかしてポケモンは、この世界のどこかに。そう思わせるあの世界観の質量!これを体験するだけでも見に行った価値がある。
ストーリーラインとしては特にひねらずストレートだし、最後の展開も好きではあるんだけど、若干ちぐはぐだなーという部分も確かにありました。あの研究施設を調べに行ってティムとルーシーが真相を掴んだ様子を察知しながらそのあとのフォローがないし(目的は別だったとしても、彼らを放置するのはまずいのは当然なので、あそこから彼らを助け出しクライマックスに繋げてくれる存在が補強として必要な気がする)、そもそもなぜ「息子を連れてこい」なのかが弱いのは気になりました。やっぱりあそこは「ティムだけがもっているもの」との等価交換じゃないと物語として弱いと思うのよ。
しかしそういったあれこれを補ってあまりあるあの映像の情報量、そしてピカチュウのあらがえないかわいさたるやっていうね。私は吹き替えで見たんだけど、西島さんだなーと存在は認識するもののうまくハマっていてよかった(むしろティムの吹替の竹内涼真くんのほうがきびしい)。それに吹替えの最大の利点は映像に集中できるってところだね…!公開前の予告編で「シワチュウ」って言われてたシワシワ具合も、文字通り濡れ鼠やないかいみたいなシオシオさも、瞳のきゅるるん具合も余すところなく堪能できる。ピカチュウだけじゃなくて、画面上にポケモンたちがたくさん出てくるので、それを追うのも忙しいし。特にピックアップされるコダックやバリヤードもめっちゃよかった。コダックかわいいよコダック。そして私は…ドダイトスが好き…(ほんとに大きいものが好きなのね…)でもパートナーにするならガーディがいい…いやでも待てよ…(止まらない妄想)。
ビル・ナイさまが出てるの知らなかったのでむちゃくちゃお得な気持ちになりましたし、渡辺謙さんの黒幕なの?そうじゃないの?どっちが好きなの?な眉間の皺も堪能しました。ヨシダ警部補がブルーをパートナーにしてるってのが何気にいいよね。いやほんと、あのポケモンパートナーとの共存て、文字通りポケモンて多様性の権化みたいな存在だから、そこもライムシティを魅力的に見せている要因なんじゃないかって気がする。
一回限りの禁じ手、みたいな形でもあるので、続編を制作するかどうかは微妙なところかなって気もしますね。でも想定よりも当たっているみたいなのでどうなんだろう。ともあれ、「ポケモン」っていう金脈で一山当てるぜ!という動機ももちろんそりゃあって当たり前なんですが、それよりも「あの世界を実在のものにするんだ」って情熱がその動機を追い越したような映画で、そこに一番感動しました。エンドロールで、これを幼い頃にポケモンのいる世界を夢見ていた当時のキッズが見たらどんな気持ちになるんだろう…!と想像して想像でもらい泣きまでしてしまったことは反省しております(笑)。