「東海道四谷怪談」

民谷伊右衛門愛之助さん、お岩を七之助さん、直助権兵衛を中車さんという顔ぶれ。会見などで「関西での上演が26年ぶり」と話されているのを見て「そんなにやってなかったのか」とちょっとびっくり。これもはや曖昧過ぎる記憶なんですけど、勘三郎さんがまだ勘九郎だった時代、集客に苦労されていたなかで大阪で上演したこの「東海道四谷怪談」が大当たりして、勘三郎さんはずっとそのことを覚えてて大阪にいらっしゃるたびに「大阪に育ててもらった」と仰ってたんだよなあ。

しかし中村屋のご兄弟はどちらもこのお岩・小仏小平・佐藤与茂七の三役をやれるのがすごいよね。それこそ日替わりとかでやってもいいかもしれない。勘九郎さんのお岩もすばらしかったものな~。

3人それぞれに見どころがあったし、それぞれに役にはまっていたと思うんだけど、座組全体としての爆発力というか、巻き込む力にちょっと欠けた印象があって、あのお岩さんが現れる演出も若干空回ってしまった感があったのが惜しかった。

しかしあの伊右衛門浪宅の場はほんっとに大南北先生のフェティッシュぶりが爆発してるというか、すげえの書くな!?と見るたびに思っている気がする。なにがすごいって、あの薬を飲ませるまでの引っ張り具合もなんだけど、なにより髪梳きの場面ですよね。苦しむ女が、それでも髪を梳いて鉄漿を塗ろうとするその矜持、けれどその顔は醜く崩れていく…って、マジで最上級のド変態(褒めてる)じゃないですか。

次は26年と言わず、ちょくちょく上方でも上演してくださいませ!