2020年8月の劇場(備忘録)

お友達とツイッターでやりとりしてたときに、「感染症対策としてこんなこともしてる、って話を具体的に出してもらう方が安心する、ガイドラインに沿ってます、ってだけじゃガイドラインの解釈がそれぞれすぎてあてにならない」ということを言われてはっとしたんですよね。確かに、いま各劇場でも当然感染症対策をとってて、とはいえ劇場の規模も公演の形態もさまざまである以上対策もさまざまで、実際に足を運んだ観客がどこに安心を感じ、どこに不安を感じたのか、みたいなことを残しておく方がいいのかもな、と思ったので、私が8月に足を運んだ劇場(と作品)についてまとめて書いておきます。思いつくままに書いていますし、いち観客として目にできたものに限られた感想であることを最初にお断りしておきます。

PARCO劇場(公演名:「大地」)

入場時に薬液を浸したマットで足裏の消毒あり。検温と手指消毒(係員が吹きかけてくれる)。看護師の待機もあったようです。トイレにも出口に足裏消毒マット。チケットのもぎりは自分で。客席は一席空けで最前列販売あり。フェイスガードはなし。役者側もフェイスガードなし、客席との間にビニールシートなどの遮蔽物なし。
事前の来場者登録か、劇場ホワイエ掲示のURコードから来場者登録をして、追跡が可能なようにしてました。客席のマスク着用率は100%(マスクしてないとそもそも入場できないので、これは当たり前ですが、中で外している人も見かけませんでした)。公演時間2時間強のところ、長めに25分の休憩時間があり、第1幕第2幕いずれも1時間強の長さ。休憩時間には扉を全開放。新しいパルコはホワイエの奥は屋外に通じているので、換気という面では安心感がありました。劇場スタッフは全員フェイスガード着用、ロビーならびに客席での会話を控えるよう常時アナウンスあり。

東京芸術劇場シアターイースト(公演名:「赤鬼」)

四方囲みのフラットな舞台で、全面にビニールシート。床までではなく、床上10センチくらいだったか。自由席。いちど座った席を変えないようにとの注意あり。客席は1席空けというより、椅子同士の間隔を開けている、という設置。両サイドは2列の設定で、そこは通路が狭そうだった。休憩時間はなく、上演時間は約90分。
入場時の検温をやったかどうかの記憶がちょっとない。当日券で見たので、当日券販売時か整理番号受領時に手首で非接触検温をされた気がする。当日券販売は当日整理番号をもらい、その中から完全抽選、当選番号発表はwebでも見られる(掲示もする)というスタイル。マスク着用率は100%。会話をお控えください、のアナウンスはあったが、あまり効果がなさそうだった(私が見た中で開演前の客同士の会話が最も多かったのはこの公演でした)。

歌舞伎座(公演名:「八月花形歌舞伎」)

各部を約1時間前後の作品にした4部制。1~4部それぞれで出演者・スタッフをかぶらないように振り分け、感染者が出ても他の部の公演が続けられるようにという徹底した体制。聞くところによれば役者のアンダーも決めていたようです。そこはさすが歌舞伎の強みが出たというところ。役者さんのブログなどから、同じ部に出ていても楽屋挨拶もなく、舞台上で顔を合わせるだけ…といったテイであったらしい。入場時に検温、手指消毒、チケットもぎり(自分で)。筋書の販売はなく、無料冊子を配布(置きチラシをとっていくスタイル)。客席は1席飛ばしで、空席に布が巻かれていた。通常、開演前にスタッフが携帯電話の電源オフなどの注意事項を口頭で言うが、ボードを掲げ、スタッフは無言、アナウンスのみ、しかしこの方が逆にひとの注意を惹いているのでは?という感じ(いつも客席をスタッフが回っていても、聴いていない人多数)。アナウンス内でCOCOAのDLについても案内あり。イヤホンガイドの貸し出しは中止。開場時間はいつもより早め。

サンケイホールブリーゼ(公演名:「三谷幸喜ショーガール」「大地」)

入場時にCOCOAの「陽性者との接触なし」の画面と、大阪府コロナ追跡システムへの登録と、チケット券面裏への氏名・電話番号の記載を確認される。推奨ではなく、この3点が揃わないと入れない。そのうえで検温と手指消毒、自分でチケットをもぎってようやく中へ。ショーガールのときは、同じフロアの小ホールを客の誘導に使い、そこでアプリのDLなどをさせていた。客席は一席飛ばしの販売。劇場が7階にあり、また劇場内にもエレベーターがあるが、使用は非推奨になっていて、具体的に歩行が困難な方などをスタッフが案内して乗せるなど限定されていた。普通に歩いて上がれるひとは乗れない(スタッフに止められる)。トイレの出口の前にスタッフがいて、アルコール消毒を必ずやる仕組み。休憩時間には扉は全開放。ロビーの飲食販売はなし。ロビーならびに客席での会話を控えるようアナウンスが常時あり。

個人的な感想など

2月以来の劇場になったわけですが、ひとつ思ったことは、この新型コロナウイルス感染症によるエンタメへの影響が出始めた当初、ライヴハウスクラスターが…という話が大きく取り上げられていた頃でもありますが、一部の演劇関係者が、ぎゅうぎゅうのスタンディングで、皆が大きな声を出すライヴはともかく、芝居は(客は)喋らないし、それほど飛沫感染のおそれがないのではないか…みたいなことを言っていた記憶があるんですけど、いや…そんなことねーな!?演劇、めっちゃ飛沫飛ぶな!?というのが6か月ぶりの劇場で思ったことでした。

特に、芸劇の「赤鬼」はキャストが多く、舞台が狭く(いや普段よりは広いが、キャストが密集しがち)、しかもガンガンに声を張る、いっぺんに喋る、という状態であったため、これはビニールシートの設置めちゃ正解だなと思いました。私は在宅勤務ができない職種なので、緊急事態宣言下であるか否かを問わず、ずーっと公共交通機関で通勤し、今もそれが続いていて、かつ職場でもまあまあ人と接触するので、ほかの人よりはコロナに対し鈍感に生きている自覚がありますが、それでもこの「いっぺんに至近距離で喋られる」というものへの抵抗は少なからずあるなと。

あと、できれば自由席というのも今は避けたいなと思ったところ。この演目がいちばん「客席での開演前のおしゃべり」が多かったのは、並んで観る連れ同士が、間隔は空いていても遮蔽物がない(1席空けている、という目に見えるものがない)ので、ついつい声をかけてしまう、かつ距離があるのでまあまあのボリュームが出る、ということになっているのでは?と。座らせなくても空席がある方が客席に「喋らない」というプレッシャーを与えるのは効果があるのかもしれないです。

空席の効果という意味では、歌舞伎座の座席に布を巻いて物理的に使用できないようにする、というのはよかったです。というのは、ブリーゼでも「使用できないよ」の張り紙はしてあったのですが、それを無視して「いいよね」と隣に座る連れ同士がいたのを現認してしまったので(係員に指導されてましたが)。

歌舞伎座はそこまで舞台ツラに出るわけではないので気になりませんでしたが、そこの距離が狭い劇場は最前列の販売はちょっと要検討なのかもなというのも思いました。ふつうに台詞言ってても、めっちゃ飛沫飛びますもんね(ライトに当たって見えるほど)。歌舞伎座が花脇を売ってないのも納得。

入場時のアルコール消毒とチケットを客自身にもぎらせる、というのはスタンダード化してるところありますが、これ客としてはいつも手順がおぼつかなくてあたふたする。できればアルコール消毒をして、手が乾いたタイミングでチケットを出し…といきたいところですが、入場時の列にならぶときは「チケットはお手元に」なので、そのお手元にある状態でどう手指消毒を受ければ一番スムーズなのか?要検討です。首から下げるストラップみたいなやつでもつけようかしら(そこまでか)。

換気の面では、1時間強で外に出られる歌舞伎座、外気にふれられるパルコに特に安心感がありました。それで思いましたけど、長い芝居への抵抗もちょっとあるよなと。せめて1時間ちょいで休憩、さらに1時間、ぐらいでどうにかまとめてほしい。第1幕だけで1時間45分とか言われると(コヤの広さにもよりますが)ちょっと今二の足を踏むかもしれない。

今回は個人的には東京への遠征で、まさに県をまたぐ不要不急の外出ど真ん中ではあったんですけど、いろいろ考えたうえで最終的に行くことを決めました。行くことを決めたからにはやれることは全部やらないかん、と1週間前からCOCOAのダウンロード、毎朝の検温を欠かさずやるようにし、ホテルは劇場のすぐ裏手にとって劇場とホテルの往復しかしない態勢をとりました。それで帰ってきたら全身丸洗いして洋服も全部着替えて次。荷物は小さくして常に膝の上におけるように、外食は基本的にしない、する場合でも一定の距離が確実に取れる店に限る、などなど。しかし、もともとひとりで遠征するのが常なので、誰にも会わず喋らず劇場とホテルの往復…通常営業やん!とも思いましたね。私は酒も飲まないので外食しないのまったく苦にならないし。

とりあえず、今のところ最後の観劇から2週間が経過したので、劇場での感染(するのもさせるのも)は回避できたのかなというところですが、大事なのはこれが結局のところ運にすぎないってことを忘れないことかなと。万事手を尽くしても、感染するときはする。あと、エンタメのためとか、劇場に足を運んで買い支えてあげたいとか、そういう大義名分はなしでいこうや、というのも「行く」と決めた時に思いました。100%自分の欲のためだけに行く、そこから目をそらすなよ、という気持ち。

客席の50%制限が取れる時がまたひとつの分岐点になりそうですが、しばらくは自分の体調、同居家族、仕事、もろもろのリスクと顔を突き合わせつつ、自分で決めていくしかなくて、決めた以上それにともなう責任ある行動を取れよということが続くんだろうなと思います。でも客側がそういうことをちゃんと考えるのそれほど悪いことばっかりでもないと思う。「興行」として成立するラインまでキャパが増える、客足が伸びる、までにはまだ時間がかかるかもしれないけど、責任ある行動を取れという部分はそれこそ「喉元過ぎれば熱さを忘れる」にならないようにしたいと思っています。