「獣道一直線!!!」

ねずみの三銃士、企画第4弾。なんとなくこういう企画ものって「3」で打ち止めみたいな気に勝手になっていたので「続くんかい!」とツッコミつつも楽しみにしておりました。今回は木嶋佳苗の事件をモデルに売れない役者3人の人生とひとりの女性を描く構図。このねずみの三銃士、第2回から一貫して女性を真ん中に置く構図になってますよね。古田新太生瀬勝久池田成志という3人の猛者を芝居の中で配置するのに、その方が書きやすいってことなのかな。

今回その芯になったのは池谷のぶえさんなんですけど、いやもうこれでのぶえさんが今年の演劇振り返りで名前が上がらなかったらウソだ、というほどに無双、無双of無双、光り輝いてました。すごい。古田・生瀬・池田を前にしてなにをやっててものぶえさんが輝くあの存在感。もちろん、この構図をちゃんと把握してどの場面でも絶妙な塩梅で芝居の押し引きを決めてる三銃士のお三方もすごい。冒頭、これ完全につか芝居だろ!というテンションでちょっとぞくっとしたよね。そこにしっかり異物感のある宮藤さんと山本美月さんというコンビが入るのも効いてた。

木嶋佳苗の事件をモチーフとするときに、ある種のルッキズムに触れずに展開させていくのは難しいというか、事件の概要を聞いたときに人が心の中に描くファムファタールな像と、ニュースで知らされるそれに多かれ少なかれ乖離がある、乖離があるからこそひとはこの事件を取り上げたがる…という部分が絶対ありますよね。なので、宮藤さんとしてもそこは慎重に書かなきゃいけないところだという自覚はありつつ、しかし反対に抉らなさ過ぎても成立しない、というところがあり、難しい綱渡りだなと思いながら見ていました。「私はあなたがたの想像力を軽く超えていきますから」って台詞は、そういう綱渡りのことを思うと、これ以上に作中の彼女の本音を現しているものはないのかもという気がします。

序盤、ヤりたい一心の男の目にはこう見える、というようなネタ的に見えた入れ替わりが、事件にのめりこんでいく妻と、その事件を語る女が最終的に入れ替わることで、彼らの主観を通して見る像のゆがみ、あやふやさ、頼りなさを突きつける構図になっていたのもよかったです。あと、3キロ太っちゃった、という妻の言葉に夫が慰めの言葉をかけるんだけど、そのあとの妻の返しが、これは今までの宮藤さんからは出てこなかった台詞だなー!と思って面白かった。

あちこちに差し挟まれる笑いのネタがんまーよくウケていて、最初は私もあんまりアハハと笑わない方がいいのかな…とか気にしてましたが、けっこう声出して笑っちゃってたな。蜷川さんもその灰皿は投げてない!とか。笑わせて笑わせて、最後あの冗談みたいな歌でぐっと落とす。河原さんの演出も派手さはあるのに無駄がない、信頼のクオリティでした。そうそう、「魔性の女」のナレーションが橋本さとしさんで、内容も相俟って最高のいい声無駄遣いだな!って感じでよかったです。