「湊横濱荒狗挽歌〜新粧、三人吉三。」

野木萌葱さんがKAATに新作描き下ろし、しかも「三人吉三」を題材に、ということでこれは見たい!と足を運んできました。例によってキャストをあまり確認せずに見ていたので、えっ!あの人も出てる!この人も!とびっくり&うれしかったのでなんか得した気分です。

「新粧、三人吉三」とあるので、三人吉三巴白浪を元ネタにしてるのはしてるんだろうなという感じはあったんですが(実は腹違いの姉弟とかさ)、思った以上に元ネタの匂いがしなかったし、あまりそれを意識しないで見た方が楽しめたんじゃないかなと思いました。というのも、三人吉三は運命に翻弄されるお嬢、お坊、和尚(そしておとせ十三郎)らの話であるようで、実のところあの芝居を見ると、これは物語の真ん中にあるのは「百両」という金そのものなんだなっていうのがよくわかるんですよね。そうやって見るとすごく飲み込みやすくなっている。でも野木さんの今作は、「金」は彼らの運命を描くうえでのアイテムなので、視点が大きく違うし、元ネタの三人吉三の、「百両」が真ん中にあるからこその登場人物の運命の「どうしようもなさ」みたいなところとはやっぱり作品の着地点が違うなという感じでした。

しかし、渡辺哲さん、山本亨さん、ラサール石井さんと、ふだんパラドックス定数の作品には顔を出さないタイプの役者さんが揃うと、それだけで厚みが増すし、野木さんのセリフやっぱり面白いなっていうのも改めて思いましたね。野木さん、汚職警官描きつつ、そのギリギリ矜持みたいなの描くの、好きなのかな。新井のキャラクターとか、筆が乗ってるな~!という感じがすごくした。ブロウクン・コンソートちょっと思い出したね。

山本亨さん、ああいうキャラやらせるとほんと、むちゃくちゃ輝くし、階段の途中で蹴り入れるところなんか、往年のつか芝居思い出させるし、いいもん見ました。みんなのそばにいてあげるけれど、だれのものにもならないおんな、を村岡希美さんが絶妙の温度感で演じていてすばらしかったです。