「九月大歌舞伎 第一部」

六世中村歌右衛門 二十年祭・七世中村芝翫十年祭ということでゆかりの演目「お江戸みやげ」と「須磨の写絵」。お江戸みやげは当代芝翫さんがお辻、勘九郎さんがおゆう、坂東栄紫を七之助さんとゆかりの演者で固めた座組。冒頭、福助さんも出演されてました。

むちゃくちゃ砕けた表現をあえてすれば「推しに課金」の人生かかったバージョンともいえるんだけど、倹約家のお辻がある役者を見初めて、ほんの少しでもいいからあの人の近くにいきたい、という「あちら側」と「こちら側」にいるからこその想い(おそらく大なり小なり、誰しも覚えのある感情)と、その人の具体的な幸福のために、「あちら側」へ踏み込み、自らを捨てるような思い切った行動をしてしまう、ということの顛末をぎゅっと濃縮した芝居で、小品という感じではあるがすごく共感性、シンパシーの高い演目なので満足感がありました。「これが私のお江戸みやげ」って、あの場面のお辻の気持ち、多くの観客に「わかる」と思わせるものがありますよね。

芝翫さんも勘九郎さんもニンかそうでないかといえばそうでないほうの部類なんだろうと思うけど、楽しそうにやってらっしゃる姿に引っ張られたところもあったな。これ福助さんもお辻のタイプかっていうとそうでもないし、難しいところだなと思いつつ。