「藤原HINOMOTO-The Squad Announcementー」THE ROB CARLTON

THE ROB CARLTON新作。平安時代に蹴鞠の日本代表を選抜することになり…ってもうイントロから私の好き要素しかない。こういう、歴史の中にあった(かもしれない)ことを描くって、勝海舟の名言「今から古を見るのは、古から今を見るのと少しも変りはない」ことを感じさせてくれる、私の大好きな設定・構図です。

帝の前での蹴鞠(天覧試合っすな)をやるにあたって、日の本一の鞠足を集めよ…という勅命に悩まされる4人の登場人物による会話劇なんですが、要所要所で古い単語をそのまま活かしつつ、軽妙なやりとりがまさに蹴鞠の如く続くのが大変心地よし。あっ、つい口調がうつってしまった。

この劇団の皆さまの出自がラグビーにあるというのは小耳に挟んだ記憶はあったんですけど、蹴鞠というとどうしてもサッカーに意識が向いちゃって、でも途中摂津国まで選手…いや鞠足のスカウトに行った話で「だんのかーたー」「いにのえすた」って名前にむちゃくちゃ笑ってしまったし、そうやんな!フットボールやもんな!ラグビーもありやんな!*1ってなってみると…もしかして…魚連ってウォーレン!?ウォーレン・ガットランド!?んじゃこのスコッドアナウンスメントって今年のブリティッシュアイリッシュ・ライオンズの選抜になぞらえてたりとか!?*2とひとりで興奮しました。でもって帰宅してから調べてみたら、暮雅(くれが)はグレガー・タウンゼント、丹射(にいる)はニール・ジェンキンズ、そして捨武(すてふ)はスティーブ・タンディとバッチリ今年のBILのコーチ陣の名前だったのでうひゃうひゃ言って喜んじゃった。ダンとイニが「誰よりも早く練習にきて誰よりも遅く帰る」とか、ご本人エピソードあざまーーす!ってなったし、いやはやもうすべての要素が俺得すぎたよ。

それ以外にも色んな要素がもちろん取り込まれてて、源和(みなもとのかず)はキング・カズをモチーフにしてるんだろうし、代わりに軒(キャプテン)に任命されたあらんうぃんはBILキャプテンのアラン・ウィン・ジョーンズさんだしで、これラグビーファンの人にも見てもらいたいわあ(笑)そういえば魚連が心を落ち着かせるために笛で奏でるのがワールド・イン・ユニオンだったし、んもう小ネタ拾いきれない!

最初はただ実力のみで選抜することを考えればよかったのに、権力者からの横槍、袖の下、上層部の顔色窺いと「今ナウ起こってることやんけ!!!」感がぐいぐいくるところ、まさに「今から古を見るのは、古から今を見るのと少しも変りはない」ことが言葉にせずとも立ち上がってくる、まさに醍醐味というやつだなと思いました。あそこで「実力がないからこそ袖の下を送ってくる、我々が選抜した者たちとは格が違います」とキッパリはねのけるの、胸がすきましたね。現実もそうあってほしいものだよ。

選抜会議といっても口角泡を飛ばすという感じではなく、粛々としつつ、突然深いこと言ったり急に夢の話を挟んできたりする面々の軽妙な会話、非常に心地よく楽しかったです。1時間45分の上演時間もすばらしき!よしなによしなに!

*1:ダン・カーターは一時期神戸製鋼に所属したオールブラックスのレジェンド。イニエスタは現在もヴィッセル神戸に在籍する言わずと知れたサッカーのレジェンド

*2:4年に1度結成される、イングランドスコットランドウェールズアイルランドから選抜される、いわばラグビー版ドリームチーム